残クレとは?水没しても車のローンは消えない仕組み

残クレとは?水没しても車のローンは消えない仕組み 経済

2026年8月13日から千葉県を襲った豪雨では道路が各地で冠水し、水没して動けなくなる車が続出した。路上に放置された車両は2800台以上にのぼり、SNS上では人気のミニバンや輸入車が水没したとの報告が相次いでいる。中でも注目されているのが、近年人気の「残クレ」で購入した車が水没したケースだ。

この一件をきっかけに「残クレとは何か」を調べる人が増えている。この記事では制度の仕組みと、今回浮き彫りになったリスクを解説する。元記事はこちら

SNSで相次いだ「残クレ水没」の嘆き

豪雨後、SNSでは愛車の水没被害を嘆く声が相次いだ。「車のローンが残っているが、車両保険には入っていない」「ローンがまだ残ってるのに廃車」「残クレで買ったアルファードが水没」といった投稿が数多く見られたという。

月々の支払いを抑えてトヨタの高級ミニバン「アルファード」などの高額車に乗れるとして人気の残クレだが、災害で車を失ってもローンの残債は消えないという「落とし穴」が、千葉豪雨をきっかけに広く注目される結果になった。

残クレ(残価設定クレジット)とは何か

残クレとは「残価設定型クレジット」の略称で、車両価格の一部をあらかじめ数年後の下取り価格(残価)として設定し、車両価格からその残価を差し引いた金額を、契約期間中に分割で支払う購入方法だ。

総額の50〜70%程度の負担で車を購入できるため、月々の支払額を抑えながら高額な車種に乗れる点が大きな魅力とされ、近年人気を集めている。

通常のローンとの違い

通常のマイカーローンは、車両価格全額を分割で支払う仕組みだが、残クレはあらかじめ残価を除いた金額のみをローンの対象とする点が異なる。契約満了時には、車を返却するか、残価を支払って買い取るか、新車に乗り換えるかを選択できる仕組みになっている。

月々の負担は軽くなる一方、走行距離に上限が設けられていたり、返却時の査定で車両の傷や汚れが減点対象になったりするなど、通常のローンにはない制約も存在する。

なぜ水没しても支払いが残るのか

残クレはあくまで「ローン」の一種であり、契約時に定めた分割金の支払い義務は、車が水没して使えなくなったとしても消えることはない。契約者は、車がなくなった後も残っているローンを払い続けなければならない。

これは残クレに限らず通常の自動車ローンでも同様だが、残クレは高額車を「月々の負担が軽い」という理由で購入している人が多いため、車を失った際の心理的・経済的ショックがより大きくなりやすい構造がある。

車両保険の普及率の実態

こうした事態への備えとなるのが「車両保険」だ。加入が義務付けられている自賠責保険は人身事故の被害者救済が目的で、水没などの物的損害は補償されない。一方、車両保険は任意加入で、台風や洪水による損害も基本的に補償対象となる。

しかし、損害保険料率算出機構の2025年度版データによると、車両保険の普及率は全国で47.4%、今回被害が集中した千葉県でも50.5%にとどまる。約半数の車が、水害などの補償を受けられない状態で走っている計算になる。

「新車特約」とは何か

通常の車両保険では、車の価値は年々下がっていくため、全損しても同等の新車を買い直せる金額が支払われるとは限らない。これを補うのが「新車特約(車両新価特約)」だ。

一定の条件を満たせば、新車価格相当額を上限に買い替え費用などが補償される仕組みで、水害による水没も対象になり得るとされる。残クレで高額車を購入する場合、こうした特約への加入がより重要になるといえる。

残クレの金利相場

残クレの金利は、ディーラーが提供するローンの場合、年率2〜5%程度が一般的な相場とされる。残価部分にも金利がかかる仕組みのため、同じ車種を通常ローンで購入する場合と比べて、総支払額が割高になりやすい点には注意が必要だ。

それでも月々の支払額の軽さから、家計の負担感を抑えたい層を中心に人気を集めており、特に高額なミニバンや輸入車の購入で選ばれる傾向が強い。

他の購入方法との比較

車の購入方法には、現金一括、通常のマイカーローン、残クレ、カーリースなど複数の選択肢がある。現金一括は総支払額を抑えられる一方、まとまった資金が必要になる。通常ローンは車の所有権が早く自分に移る一方、月々の負担は残クレより重くなりやすい。

カーリースは月額料金に保険や税金が含まれるプランもあり、水害時のリスクの扱いも契約内容によって異なる。それぞれの方式でリスクとメリットが異なるため、自分のライフスタイルや資金計画に合わせて選ぶことが重要だ。

罹災証明書と保険金請求の流れ

水害で車が被害を受けた場合、まず自治体が発行する「罹災証明書」を取得し、保険会社に連絡して被害状況を報告するのが一般的な流れになる。車両保険に加入していれば、写真などの証拠をもとに損害調査が行われ、保険金の支払いが決定される。

ただし、車両保険に未加入の場合はこうした補償を受けられず、修理費や買い替え費用は全額自己負担になる。残クレで購入した車が水没した場合、保険金が下りなければ、ローンの返済と新たな車の購入費用の両方を同時に抱えることになりかねない。

残クレのメリット・デメリット

残クレのメリットは、月々の支払いを抑えながら高額な車種を購入できる点にある。一方でデメリットとしては、走行距離制限や査定による追加請求リスクに加え、残価部分にも利息がかかるため、総支払額では通常ローンより割高になる可能性がある点が挙げられる。

今回のような自然災害による水没リスクも、残クレ特有の「車を失っても支払いが残る」という構造上のデメリットとして、改めて注目されることになった。

千葉豪雨の被害規模

今回の千葉豪雨では、道路が各地で冠水し、多数の車両が水没・放置される事態となった。読売新聞の報道によれば、路上に放置された車両は2800台以上にのぼるという。線状降水帯の発生による短時間の猛烈な雨が、広範囲の車両被害を引き起こした形だ。

今後も同様の集中豪雨が全国各地で発生するリスクがある中、車の購入方法とあわせて、保険加入の重要性が改めて浮き彫りになっている。

今後の教訓

残クレを利用して車を購入する際は、月々の支払額の軽さだけでなく、万が一車を失った場合のリスクについても十分に理解しておく必要がある。特に車両保険や新車特約への加入は、災害リスクが高まる近年においてますます重要性を増している。

「月々の負担が軽いから」という理由だけで高額車を選ぶのではなく、災害時の備えまで含めたトータルでの資金計画を立てることが、今回のような事態を防ぐ確実な方法といえそうだ。

近年、線状降水帯による集中豪雨が全国各地で頻発するようになったことも踏まえると、車両保険への加入は、もはや「念のため」ではなく「必須の備え」として捉え直す時期に来ているのかもしれない。

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