経済産業省などが2027年度の税制改正要望に、ベビーシッターや家事支援サービスの利用者への税制優遇を盛り込む方針を固めたことが分かった。働く子育て世代の経済的負担を和らげ、仕事と育児の両立を後押しする狙いがあるという。
このニュースをきっかけに「具体的にどんな優遇が受けられるのか」を調べる人が増えている。この記事では想定される制度の内容を整理する。元記事はこちら。
今回明らかになった方針の内容
関係者によると、経産省は所得税の軽減を想定しており、課税所得を減額する「所得控除」と、納税額から一定額を差し引く「税額控除」の両方が選択肢として検討されているという。税制改正大綱をまとめる年末に向け、厚生労働省やこども家庭庁と、控除の在り方や控除割合を協議する見通しだ。
高市早苗首相が、家事支援サービス利用時の税制措置を検討するよう関係閣僚に指示していたことが、今回の動きの発端になっている。
所得控除と税額控除の違い
所得控除とは、税金の計算のもとになる課税所得そのものを減らす仕組みで、所得が高い人ほど減税効果が大きくなる傾向がある。一方、税額控除は計算された税額から直接一定額を差し引く仕組みで、所得水準にかかわらず控除額が一定になりやすいという特徴がある。
どちらの方式が採用されるかによって、実際にどの所得層がどの程度恩恵を受けられるかが大きく変わってくるため、今後の制度設計の焦点の一つになりそうだ。
対象となるサービスの絞り込み方針
税優遇の対象とするサービスについては、範囲を絞る方向で検討が進んでいる。ベビーシッターの場合は、保育士や看護師らが提供する安全で質の高い育児サービスの利用に限定する方針だ。
家事支援については、政府が2027年に創設予定の国家資格の保有者によるサービスを軸に検討が進められている。誰でも利用できる制度にするのではなく、一定の質を担保した事業者のサービスに絞り込むことで、安全性や信頼性を確保する狙いがあるとみられる。
既存の「こども家庭庁ベビーシッター券」との違い
ベビーシッター利用を巡っては、既に「こども家庭庁ベビーシッター券」という補助制度が存在する。企業主導型ベビーシッター利用支援事業の承認を受けた勤務先から交付を受ける形で、1回あたり4600円の割引が受けられる仕組みだ。
今回検討されている税優遇は、この既存の割引券制度とは別の枠組みとして、税制面から追加的な負担軽減を図るものとみられる。両方の制度を組み合わせて利用できるようになれば、子育て世帯にとってより手厚い支援になる可能性がある。
家事支援の国家資格化という新しい動き
今回の税優遇方針で注目されるのが、2027年に創設予定の家事支援に関する国家資格だ。これまで家事支援サービスは事業者ごとに独自の研修や認定基準を設けてきたが、国家資格の創設によって、サービスの質を全国一律で担保する狙いがあるとみられる。
家事支援サービスの事業者団体は6月、国家資格保有者に加え、一定基準を満たす事業者のサービスも税制優遇の対象に含めるよう自民党に提言している。資格制度と税優遇をどう連動させるかは、今後の制度設計における重要な論点になりそうだ。
ベビーシッターの費用相場
ベビーシッターサービスの利用料金は、時間単位でおおむね2000円から3000円程度が相場とされる。これに交通費や入会金、年会費などが加わることも多く、日常的に利用するには一定の経済的負担が伴う。
共働き世帯が急な残業や体調不良時にベビーシッターを利用しようとしても、費用面がネックとなり利用をためらうケースは少なくない。今回の税優遇が実現すれば、こうした「もしもの時」の利用ハードルを下げる効果が期待される。
諸外国の育児支援税制との比較
育児や家事支援サービスへの税制優遇は、日本に限った取り組みではない。欧米の一部の国では、託児サービスの利用費用について税額控除の対象とする制度が以前から存在しており、共働き世帯を支える仕組みとして定着している例もある。
日本では現金給付による子育て支援が中心だったが、今回のような税制面でのアプローチは、働きながら子育てをする世帯への支援策の選択肢を広げるものとして注目されている。
待機児童問題との関連
ベビーシッターや家事支援サービスへの支援拡充は、保育所の待機児童問題とも無関係ではない。希望する保育所に入所できない世帯にとって、ベビーシッターは重要な代替手段となる場合があり、こうしたサービスへのアクセスを改善することは、保育の選択肢を広げる意味でも重要だ。
待機児童数はピーク時に比べて減少傾向にあるとされるが、地域や年齢によっては依然として保育の受け皿が不足している状況もあり、多様な保育の形を支援する政策的な意義は大きい。
所得制限を巡る論点
今回の税優遇を巡っては、所得制限を設けるかどうかも大きな論点となっている。所得制限を設けなければ幅広い世帯が恩恵を受けられる一方、限られた財源をより支援が必要な世帯に重点的に配分すべきだという意見もある。
男女の賃金差が大企業ほど顕著だとするデータもあり、共働き世帯の経済的な負担軽減策をどう設計するかは、ジェンダー平等の観点からも注目されるテーマだ。
共働き世帯を取り巻く現状
近年、共働き世帯は増加を続けており、仕事と育児の両立を支える環境整備が政策課題として重視されてきた。ベビーシッターや家事支援サービスの利用は、こうした両立を支える選択肢の一つとして広がりを見せている。
一方で、こうしたサービスの利用料は決して安くなく、経済的な理由で利用をためらう世帯も少なくない。今回の税優遇方針は、こうした金銭的なハードルを下げることで、サービスの利用をより身近なものにする狙いがあるとみられる。
今後のスケジュール
制度の具体的な内容は、年末にまとめられる税制改正大綱に向けて詰められていく見通しだ。控除の在り方や控除割合、所得制限の有無など、まだ流動的な部分が多く残っている。
働く子育て世代にとって直接的な経済的メリットとなりうる今回の方針が、実際にどのような形で制度化されるのか、年末に向けた議論の行方が注目される。
制度の対象範囲が絞り込まれることで、質の高いサービスを提供する事業者にとっては追い風となる一方、対象外となる事業者との間で利用者の選択に差が生じる可能性もある。国家資格制度の整備が、業界全体の質の底上げにどうつながっていくかも、あわせて注目したいポイントだ。
共働き世帯の増加が続く中、仕事と育児の両立を金銭面から支える施策として、今回の税優遇がどこまで実効性のある制度になるか、今後の詳細な設計が待たれる。


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