日本でベジタリアンが「食べるものがない」と言われる理由

日本でベジタリアンが「食べるものがない」と言われる理由 社会

イタリア人男性、日本の食事情に困惑

イタリア・ミラノから2度目の訪日を果たしたフルビオさん。東京や仙台、京都、大阪、熊野古道など各地をめぐり、日本の文化や街並みを満喫している一人だ。以前は仕事で冬の日本を訪れ、深い感銘を受けたことが再訪のきっかけになったという。しかし、食事の場面では少し様子が異なるという。

3週間の滞在予定で日本各地を旅する中、豊かな自然が残る熊野古道の散策から都市観光まで、変化に富んだ行程を楽しんでいるというフルビオさんだが、毎回の食事選びには一定の苦労が伴うようだ。

「日本食はおいしいけど多様性に欠ける」

「日本食はとてもおいしいよね。でも実は、僕はイタリアでベジタリアンなんだ」と語るフルビオさん。「日本でベジタリアンで通すのは至難の業だから、臨機応変に対応している」と話し、「そういう意味では少し多様性に欠けているのかな」と本音をこぼした。

イタリア国内では菜食主義の生活を送っているフルビオさんにとって、選択肢の限られる日本での食事は、旅の楽しみの一部を制約する要因になっているようだ。

なぜ日本はベジタリアン対応が難しいのか

日本の飲食店では、かつお節や煮干しなどを使っただしや、みりん・醤油といった調味料に動物由来の成分が使われていることが多く、外見上は植物性に見えるメニューでも完全な菜食対応になっていないケースが少なくない。うどんやそばのつゆ、味噌汁の出汁など、和食の根幹を支える味わいの多くが動物性食材に由来している点が、対応を難しくしている大きな要因だ。

選択肢が限られることから、フルビオさんのように現地の食文化に合わせざるを得ない旅行者は多いとみられる。

訪日ベジタリアン・ヴィーガンは年間150万人超

世界人口に占めるヴィーガン・ベジタリアンの割合は1%程度とされるが、訪日するベジタリアン・ヴィーガン旅行者は年間145万〜190万人に達するとの推計もある。決して少なくない規模の需要がありながら、対応できる飲食店が限られている状況は、観光立国を目指す日本にとって見過ごせない課題だ。

広がりつつある自治体・店舗の取り組み

近年はインバウンド需要の高まりを受け、ヴィーガン・ベジタリアン対応をうたう飲食店や、専用メニューを用意する店も都市部を中心に徐々に増えてきている。東京都は2023年から、飲食事業者向けにベジタリアン・ヴィーガン認証取得を支援する補助金制度を設けており、対応店舗を紹介する冊子の作成やセミナー開催も進めている。

福岡市でも、ヴィーガン対応店のPRや、食材提案などを通じた飲食店支援が行われているほか、東京都台東区では対応店を紹介するマップの制作や認証取得への助成金交付など、地域ぐるみでの取り組みが広がっている。

認証マークが果たす役割

ヴィーガン・ベジタリアン向けの認証マークを掲示する店舗も増えており、「国内外問わず一目でヴィーガンメニューと分かる」という利点が評価されているという。旅行者にとっては、事前に対応可能な店舗を見分けやすくなることが、安心して食事を楽しめる環境づくりにつながる。

インバウンド拡大で問われる食の多様性

訪日外国人が今後さらに増える中、宗教上の理由やアレルギー、菜食主義など多様な食のニーズにどう応えていくかは、日本の飲食業界にとって避けて通れない課題になりつつある。フルビオさんのような率直な指摘は、日本の食文化が次の段階に進むためのヒントとも言えそうだ。

だしや調味料の選択肢を広げる工夫、メニュー表示の多言語化・アイコン化など、地道な取り組みの積み重ねが、今後の評価を左右していきそうだ。

ベジタリアンとヴィーガンの違い

混同されがちだが、ベジタリアンとヴィーガンは厳密には異なる概念だ。ベジタリアンは肉や魚を避けつつも、卵や乳製品、はちみつなどは口にする人が多いのに対し、ヴィーガンは卵・乳製品・はちみつを含む動物由来の食品全般を避ける、より厳格な菜食主義とされる。

飲食店側がこの違いを正しく理解し、それぞれに応じたメニュー表示を行うことが、訪日旅行者に安心して食事を楽しんでもらうための第一歩になる。単に「ベジタリアン対応」とひとくくりにするのではなく、具体的にどの食材を除いているかを明示することが、信頼につながるとされる。

宗教上の理由による食事制限との違い

ベジタリアン・ヴィーガンへの対応は、イスラム教徒向けのハラール対応や、ユダヤ教徒向けのコーシャ対応とはまた異なる配慮が必要になる。いずれも「特定の食材を避けたい」という点では共通するが、その理由や厳格さの度合いはそれぞれ異なるため、飲食店にとっては複数の対応を並行して検討する必要がある。

多様な食文化的背景を持つ旅行者が増える中、こうした違いを踏まえたきめ細かい対応が、今後の観光業にとって重要性を増していくとみられる。

海外のベジタリアン対応との比較

欧米諸国では、ベジタリアン・ヴィーガン向けのメニューがレストランのメニュー表に標準的に併記されていることが多く、外食産業全体で対応が進んでいる国も少なくない。こうした国から訪れる旅行者にとって、日本での対応の少なさは特に大きなギャップとして感じられやすい。

一方で、フランスやイタリアのように伝統的な食文化への誇りが強い国では、動物性食材を多用する料理も根強く残っており、必ずしも欧米すべてでベジタリアン対応が進んでいるわけではない点にも留意が必要だ。日本の状況は、決して特殊な例外というわけではないともいえる。

外食産業が取り組むべき次の一歩

専門家からは、全面的なベジタリアン専門店を増やすよりも、既存の飲食店が一部メニューを植物性食材に置き換える形での対応を進める方が、現実的で持続可能だという指摘もある。だし文化を大切にしながら、昆布や干し椎茸など植物性のうま味を活用した代替レシピの開発も各地で進んでいるという。

訪日客の多様なニーズに応えることは、結果的に国内の菜食主義者やアレルギーを持つ人々にとっても暮らしやすい環境づくりにつながる。フルビオさんのような声が、日本の食のあり方を見直すきっかけになるかもしれない。

熊野古道など地方での対応状況

フルビオさんが訪れた熊野古道のような地方の観光地では、都市部以上にベジタリアン対応が難しいのが実情だ。地域の食材や郷土料理を生かした観光振興が進む一方、動物性食材を使わない選択肢の提供までは手が回っていない宿泊施設や飲食店も多いとみられる。

それでも、世界遺産として国際的な知名度を持つ熊野古道のような地域では、今後インバウンド需要の拡大とともに、対応の必要性がさらに高まっていく可能性がある。

フルビオさんの日本再訪から見えるもの

今回フルビオさんが語ったのは、単なる不満というより、日本の食文化への愛着を前提とした率直な感想だった。「また来たいなと思っていた」という言葉からもうかがえるように、多少の不便さがあっても日本を再び訪れたいと感じさせる魅力が、日本の観光地には備わっている。

だからこそ、こうした声に耳を傾け、少しずつでも改善を重ねていくことが、リピーターを増やし、日本の観光をさらに発展させることにつながるはずだ。今後の旅程でも、フルビオさんが日本ならではの体験を存分に楽しめることを願いたい。

元記事はこちら:「食べられるものがないからね」イタリア人が日本の飲食店で困惑(Hint-Pot)

コメント

タイトルとURLをコピーしました