コメの卸売価格が下落する兆しを見せている。農林水産省が5月に発表した水田の作付意向調査によると、コメの生産量が需要予測を上回る見通しとなっており、一部の小売店では5キロ3000円を割る価格帯の商品も並び始めているという。
供給過剰の懸念
農水省の調査によると、コメが順調に生育した場合の生産量は733万トンに達する見通しで、需要予測の711万トンを22万トン上回る。これに加えて、コメの民間在庫も積み上がっており、供給過剰になる可能性が指摘されている。
5月22日の定例会見で、鈴木憲和農水相は主食用のコメが供給過剰になる可能性を認めた上で、「需給バランスなど、民間の取引環境の中で決まっていくものであるため、今後の価格の見通しについて、予断をもってお答えすることは困難」としながらも、「コメの需要を上回る在庫量となれば、当然ながら価格は下がる」と述べた。
在庫が積み上がった経緯
今回の状況は、2024年8月に起きた「令和の米騒動」に端を発している。日向灘地震の発生を受け、政府が南海トラフ地震への注意を呼びかけたことをきっかけに、一部消費者がコメの買い溜めに動いた。
前年産米と新米が入れ替わる端境期と重なったこともあり、小売店の棚からコメが消える事態となった。品薄への不安がさらなる買い占めを招く悪循環に陥り、外国人観光客の増加による和食需要の高まりも重なって、コメの販売価格は高騰を続けた。
都内のスーパーではブランド米が5キロ5000円台で売られる異常事態も生じ、昨秋には新米の争奪戦が繰り広げられたという。
こうした高値に困惑した消費者の中には、台湾・韓国・アメリカ産などの外国産米に切り替えたり、パンや麺類を主食にしたりする動きも広がった。結果として卸業者の倉庫には売れ残ったコメが積み上がり、業界内では「このままではコメの暴落が起きる」との危機感が強まっている。
コメ農家にとっては死活問題
消費者にとって価格の下落は歓迎される一方、コメ農家にとっては経営の存続に関わる深刻な問題だ。生産コストを考慮すると、5キロあたり2000円台まで価格が落ち込めば採算が取れなくなり、農家の廃業が相次ぐ恐れがあるとの指摘も出ている。急激な価格上昇の反動が、今度は生産現場を直撃する形になりつつある。
生産者と消費者、双方の課題
コメの価格を巡っては、消費者の家計負担と生産者の経営維持という、相反する利害をどう調整するかが大きな課題となっている。政府による価格下支え策や、備蓄米の運用方針が今後どうなるのかにも関心が集まりそうだ。
また、近年の異常気象による不作リスクも重なる中、コメの需給バランスがどのように推移していくのか、長期的な視点での議論も求められている。
2024年の品薄と高騰、そこからわずか1年での供給過剰という振れ幅の大きさは、コメという主食が抱える構造的な課題を浮き彫りにしたとも言える。作付面積の調整や流通の透明性向上など、価格の乱高下を防ぐための仕組みづくりが今後の焦点になりそうだ。
消費者にとっての「手頃な価格」と、農家が経営を続けられる「持続可能な価格」との間にどれだけの隔たりがあるのか、今回の値動きを機に改めて可視化されつつある。生産と消費の双方が納得できる着地点をどう見出すか、政府の対応にも今後注目が集まりそうだ。
備蓄米の放出タイミングや輸出拡大策など、余剰分をどう活用していくかという議論も、今後さらに活発になっていくとみられる。1年前とは正反対の状況に振れたことで、コメの価格政策そのものを見直す契機になる可能性もある。
元記事はこちら: コメ価格「5キロ3000円割れ」が現実に(Yahoo!ニュース)


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