ガソリン暫定税率とは?高市首相が170円維持を表明

ガソリン暫定税率とは?高市首相が170円維持を表明 経済

高市早苗首相は8月25日、ガソリン価格を全国平均でリッター170円程度に抑制するための補助金政策について、継続する方針を表明した。「国民の皆様の命と暮らしを守り、経済活動に支障を生じさせないよう」として、赤沢経済産業大臣に対し、片山財務大臣と必要な調整を進めるよう指示したことを明らかにした。

このニュースをきっかけに「なぜガソリン価格が170円程度に抑えられているのか」を調べる人が増えている。この記事では暫定税率の歴史とあわせて、現在の補助金の仕組みを解説する。元記事はこちら

170円程度に抑えられている現状

高市首相は「高市内閣の措置によって、ガソリン価格は8月17日時点で169.8円で、日米欧の中で日本が一番安価な状況となっている」と強調した。中東情勢の不透明さを踏まえ、「原油価格の見通しは困難な状況」だとして、予備費を活用した価格抑制策の継続を決めた形だ。

この対応に必要な基金規模を確保するため、赤沢経済産業大臣に片山財務大臣との調整を指示したことも明らかにしている。

「暫定税率」とは何だったのか

ガソリン価格を語る上で欠かせないのが「暫定税率(当分の間税率)」という制度だ。これは1974年、道路整備を進めるための財源として導入された上乗せ税で、ガソリン税(揮発油税・地方揮発油税)に1リットルあたり25.1円が上乗せされていた。

本来は一時的な措置として導入されたにもかかわらず、約51年にわたって継続されてきた経緯があり、「暫定」という名前と実態のかい離が、長年批判の的になってきた。

暫定税率廃止の経緯

2025年11月、暫定税率の廃止法案が国会で全会一致により可決・成立し、同年12月31日をもってガソリンの揮発油税暫定税率は正式に廃止された。長年の懸案だった負担軽減が、ついに実現した形だ。

この廃止に向けて、政府は2025年5月からガソリンなどの燃料油価格を補助する支援を実施し、11月中旬から2週間ごとに段階的に補助額を拡充。12月には、補助金の額が暫定税率の上乗せ分と同水準の25.1円に達していた。

ガソリン税の複雑な仕組み

ガソリンにかかる税金の構造は複雑で、国税である揮発油税と地方税である地方揮発油税が課され、そこに暫定税率が上乗せされる形になっていた。さらに、ガソリン税を含めた販売価格全体に対して消費税もかかるという、いわゆる「二重課税」の問題も、以前から指摘されてきた。

暫定税率の廃止は、この複雑な税負担構造の一部を解消するものだったが、揮発油税本体や消費税といった他の税負担は引き続き残っている。

ガソリン補助金政策のこれまでの経緯

実は、ガソリンへの補助金政策は今回が初めてではない。2022年1月、原油価格の高騰を受けて、政府は燃料油元売り会社に補助金を出す形で、ガソリン価格の急激な上昇を抑える緊急対策を開始した経緯がある。

当初は「1リットルあたり25円を上限」とする緊急的な措置だったが、その後、原油価格の高止まりが続いたことで、補助額の上限が段階的に引き上げられ、結果として長期間にわたり継続される政策となってきた。今回の170円程度での価格維持も、こうした一連の政策の延長線上に位置づけられる。

家計への影響

ガソリン価格の抑制は、自動車を日常的に利用する家庭や、運送業・農業など燃料コストが経営に直結する事業者にとって、直接的な負担軽減効果を持つ。特に公共交通機関が発達していない地方では、自動車が生活必需品としての性格を強く持つため、価格抑制策への関心は高い。

一方で、補助金という形での価格維持は、税金を財源とした間接的な支援であるため、最終的には国民全体の負担で成り立っている点も見過ごせない視点だ。

廃止後もなぜ補助金が必要なのか

暫定税率が廃止されれば、理論上はその分だけ価格が下がるはずだ。しかし、原油価格そのものが国際情勢の影響で変動するため、暫定税率廃止による値下げ効果だけでは、価格の安定を保証できない。

今回、高市首相が継続を表明した補助金は、暫定税率廃止後もなお、原油価格の上昇分を吸収し、170円程度という一定の水準を維持するための追加的な措置と位置づけられる。中東情勢の緊迫化などで原油価格が高騰すれば、補助金がなければ170円を超える可能性があるためだ。

補助金の財源

今回の価格抑制策の財源としては、中東情勢等の対応のための予備費が活用される。予備費とは、予算成立後に生じた不測の事態に対応するため、あらかじめ使途を特定せずに計上しておく予算のことだ。

今回、高市首相は必要な基金規模を確保するため、経産大臣に財務大臣との調整を指示しており、今後の予算編成の中で具体的な金額が固まっていくとみられる。予備費は本来、災害対応など予測困難な緊急事態に備えるためのものであり、恒常的な物価対策への継続的な充当については、財政規律の観点から慎重な議論を求める声も出ている。

日米欧で最も安い価格という主張

高市首相が強調した「日米欧の中で日本が一番安価」という比較は、各国のガソリン価格の中で日本の水準の低さをアピールする狙いがある。欧米では日本以上に高い税率がガソリンに課されている国が多く、単純な価格比較では日本の負担が相対的に軽く見える面がある。

ただし、税制の構造や国民の所得水準、公共交通機関の整備状況など、各国の事情は大きく異なるため、単純な価格比較だけで負担の重さを論じることには注意が必要だとの指摘もある。

今後の見通し

中東情勢が不透明な中、原油価格の先行きは予測が難しい状況が続いている。政府がどこまでの期間、170円程度の水準を維持し続けられるかは、今後の国際情勢と財政状況次第という側面が大きい。

暫定税率の廃止という悲願が実現した一方で、補助金という形での価格抑制が事実上続いている現状は、ガソリン価格を巡る政策論争が完全には終わっていないことを示している。今後の予算編成の議論にも注目が集まる。

予備費という限られた財源を、いつまでこの目的に充て続けられるのかも大きな論点だ。他の緊急対応に必要な財源とのバランスをどう取るか、財政当局にとっては難しいかじ取りが求められることになる。

ガソリン価格という誰もが日常的に意識する指標だからこそ、今回のような政府の対応は国民生活への影響が直接的に伝わりやすい。今後、原油価格や為替の動向次第で、補助金の規模や継続期間がどう調整されていくのか、引き続き注視する必要がある。

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