石川県や富山県で8月27日未明から降り続いた大雨は、日本海から東北に停滞する前線に向かって南から暖かく湿った空気が継続的に流れ込み、「線状降水帯」が発生したことでもたらされた。27日午後2時半までの24時間降水量は、富山県氷見市で358ミリ、石川県羽咋市で340.5ミリと、複数の地点で観測史上最大を更新している。
今月中旬の千葉豪雨に続く極端な大雨に、「線状降水帯とは何か」を調べる人が増えている。この記事では線状降水帯の仕組みと、専門家が指摘する地球温暖化との関係を整理する。元記事はこちら。
線状降水帯とは何か
線状降水帯とは、次々と発生する発達した積乱雲が列をなし、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、長さ50〜300キロメートル程度、幅20〜50キロメートル程度の線状に伸びる強い降水域を指す。
通常の雨雲は移動しながら雨を降らせるため、同じ場所への降水は一時的なものにとどまる。しかし線状降水帯では、同じ場所に長時間にわたって強い雨が降り続けるため、河川の氾濫や土砂災害などの重大な被害につながりやすいのが特徴だ。
発生の仕組み
線状降水帯が発生する仕組みは「バックビルディング現象」と呼ばれる。下層と中層で風向・風速が似た状態が続くと、積乱雲が生み出す下降気流に伴う冷たい空気の塊に、暖かく湿った空気が乗り上げる形で上昇気流が発生する。
この上昇気流が新たな積乱雲を生み出し、同じ発生地点から次々と積乱雲が湧き続けることで、雲の帯が同じ場所にとどまり続ける。今回の石川・富山の大雨も、太平洋に張り出した高気圧の西縁と、東シナ海を進行中の台風18号の間を通るように、暖かく湿った空気が継続的に前線に流れ込んだことが直接の原因とされている。
「線状降水帯」という言葉はいつから使われているのか
線状降水帯という用語を初めて定義したのは、気象庁気象研究所の研究者らが2007年に出版した研究者向けの教科書とされる。当初は専門用語として学術分野で使われていた言葉だった。
日本のマスコミでこの用語が広く使われるようになったのは、2014年8月の広島市土砂災害が最初とされる。以降、毎年のように各地で線状降水帯による災害が報じられるようになり、一般にも広く知られる言葉として定着してきた。
なぜ今回、記録的な豪雨になったのか
今年は西日本の猛暑の影響もあって、日本海側の海水面が平年より2〜3度高い状態となっている。海面水温が高いと、大気中に含まれる水蒸気の量が増え、より発達した積乱雲が生まれやすくなる。
今回のケースでも、大気中に大量の水蒸気が存在したことで積乱雲が次々に発達し、記録的な豪雨につながったとみられている。海水温の上昇という気候的な背景が、今回の豪雨の規模を押し上げた要因の一つといえる。
専門家が指摘する地球温暖化との関係
三重大の立花義裕教授(気象学)は、今月の千葉豪雨や関東で相次ぐゲリラ豪雨にも触れ、「昔ならここまでの雨にはならなかっただろう。温暖化によって過去に経験のない雨が降る確率は従来より高くなっている」と指摘している。
東京大の中村尚名誉教授(気候力学)も「今後、秋雨前線が停滞する時期になる。温暖化で大気中の水蒸気量が増えているので、積乱雲が発生する条件がそろうと、より多くの雨を降らせる」と警戒を呼びかけている。両専門家の見解に共通するのは、温暖化による大気中の水蒸気量の増加が、極端な豪雨のリスクを高めているという指摘だ。
相次ぐ豪雨被害の傾向
今回の石川・富山の豪雨に先立ち、今月中旬には千葉県でも記録的な大雨が発生している。地域を問わず、短期間のうちに観測史上最大クラスの降水量を記録する事例が相次いでいる状況だ。
こうした傾向は、特定の地域に限った現象ではなく、日本各地で同時多発的に発生し得るリスクとして捉える必要がある。今後、秋雨前線の停滞時期に入ることで、同様の豪雨がさらに発生する可能性も指摘されている。
台風18号との位置関係
今回の大雨をもたらした要因の一つが、東シナ海を進行中だった台風18号の存在だ。台風そのものが直接上陸したわけではないが、太平洋側の高気圧との間に暖かく湿った空気の通り道を作り出し、前線への水蒸気の供給源として機能した。
台風が遠く離れた場所にあっても、その周辺の気流が離れた地域の大雨に影響を与えることは珍しくない。今回のように、台風本体の直接的な被害がなくても、間接的な形で記録的な豪雨を引き起こすケースがあることは、防災上見落とされがちなポイントといえる。
ゲリラ豪雨との違い
線状降水帯としばしば混同される言葉に「ゲリラ豪雨」がある。ゲリラ豪雨は、単発の積乱雲が急速に発達し、局地的かつ短時間に激しい雨を降らせる現象を指すことが多く、予測が難しい点は共通している。
一方、線状降水帯は複数の積乱雲が列をなして同じ場所にとどまり続けるため、雨が降り続く時間が数時間単位と長く、被害の範囲や規模もより大きくなりやすい。両者はメカニズムも影響範囲も異なるため、区別して理解しておくことが防災上重要とされる。
今後の防災への備え
線状降水帯による豪雨は、発生してからの避難では間に合わないケースもあるため、気象庁は「顕著な大雨に関する情報」などを通じて早期の注意喚起を行っている。近年は線状降水帯の発生を事前に予測する「線状降水帯予測情報」の精度向上にも取り組みが進められている。
温暖化の影響で極端な豪雨のリスクが今後も高まるとみられる中、住んでいる地域のハザードマップを確認し、早めの避難行動を意識しておくことが、被害を防ぐ上で重要になりそうだ。


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