静岡県焼津市に住む無職の男性(72)が、約26年間にわたり不法に日本に在留したとして、不法在留の疑いで逮捕された。男性は1993年9月ごろ、弟のパスポートを使って飛行機で日本に不法入国し、短期滞在の資格を得た後、不法在留罪が新設された2000年2月から約26年間、日本に不法に在留した疑いがもたれている。
このニュースをきっかけに「不法在留罪とはどんな罪なのか」を調べる人が増えている。この記事では制度の内容と今回の経緯を整理する。元記事はこちら。
事件の経緯
警察によると、男性は日雇いのアルバイトなどをしながら生活し、別の名前(異名)を使って身分を隠していたとみられる。今回の逮捕は、第三者からの通報がきっかけで発覚したという。男性は容疑を認めており、警察はどのような経緯で長期間にわたり在留を続けていたのか、詳しい経緯を調べている。
1990年代当時は短期滞在の資格で入国し、期限が過ぎてもそのまま日本国内にとどまり続けたケースとみられる。長期間にわたり摘発を免れてきた背景についても、今後の捜査で明らかになる可能性がある。
不法在留罪とは何か
不法在留罪とは、正規の手続きを経ずに日本に入国した外国人が、その後も引き続き日本国内に在留し続けることを処罰する罪だ。出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づく犯罪で、2000年の法改正によって新設された、比較的新しい規定にあたる。
今回の男性が2000年2月からの在留期間を問われているのは、この不法在留罪の新設タイミングと一致するためだ。それ以前の在留期間については、別の罪として扱われる可能性がある。
不法残留罪との違い
不法在留罪と混同されやすい言葉に「不法残留罪」がある。両者は似ているようで、成立する原因が異なる。
不法残留罪は、いったん正規の在留資格を得て入国したものの、定められた在留期間を過ぎても日本にとどまり続けるケース、いわゆる「オーバーステイ」を指す。一方の不法在留罪は、そもそも不正な方法で入国した後、引き続き日本に在留し続けているケースを対象とする点が異なる。
なぜ2000年に新設されたのか
2000年の入管法改正より前は、不法入国や不法上陸そのものを罰する「不法入国罪」は存在したものの、その後の在留状態を継続的に処罰する規定がなかった。このため、入国時点から一定期間が過ぎると、不法入国罪自体の時効が成立してしまい、それ以降の滞在を摘発しづらいという課題があった。
この不都合を解消するために新設されたのが不法在留罪だ。不法在留罪には時効がなく、発覚した時点でさかのぼって処罰の対象になり得る点が大きな特徴とされる。今回のケースで26年間という長期の在留期間が問題視されているのも、この時効のなさが関係している。
不法在留罪の罰則
不法在留罪が成立した場合の罰則は、3年以下の懲役もしくは禁錮、または300万円以下の罰金と定められている。加えて、有罪が確定した場合は、原則として日本から退去強制(強制送還)の対象となる。
退去強制となった場合、一定期間は日本への再入国が認められなくなるなど、その後の生活にも大きな影響が及ぶことになる。
不法滞在者数の推移
出入国在留管理庁は毎年、日本国内の不法残留者数を公表している。統計上「不法残留者」として集計される数には、今回のような長期の不法在留のケースも実質的に含まれる形で把握されているとみられる。
近年は水際対策の強化や在留管理の厳格化が進んだこともあり、不法残留者数は一時期に比べて大きく減少してきたとされる。一方で、今回のように身分を偽りながら長期間発覚を免れるケースも一定数存在することが、こうした事件を通じて明らかになっている。
異名を使った身分隠しの実態
今回のケースで注目されるのが、男性が「異名」を使ってアルバイトをしていたとされる点だ。正規の在留資格がない状態で就労を続けるためには、身元の確認が緩やかな職場を選んだり、他人の名義を借りたりするなど、何らかの形で身分を偽装する必要が生じることが多い。
日雇いのアルバイトは、比較的身分確認が簡易的に済まされるケースがあることから、不法滞在者が生活の糧を得る手段として選ばれやすいという指摘もある。
在留資格を偽装する主なパターン
今回のように他人のパスポートを使って入国するケースのほか、留学や技能実習といった在留資格で入国した後、資格外の就労を続けて期限が過ぎても帰国せず滞在を続けるパターンも多く報告されている。入管当局は近年、こうしたパターンごとの対策を強化してきた。
特に技能実習制度をめぐっては、実習先とのトラブルをきっかけに失踪し、そのまま不法就労状態に陥ってしまう外国人が一定数存在することが、これまでも国会などで議論の対象になってきた。今回の男性のケースとは経緯が異なるが、在留資格の管理をどう徹底するかという点では共通する課題といえる。
発覚のきっかけになりやすい通報
今回の事件は、第三者からの通報がきっかけで発覚した。不法滞在者の摘発は、入管当局や警察による定期的な取り締まりだけでなく、職場の同僚や近隣住民からの情報提供によって発覚するケースも少なくないとされる。
長期間にわたり身分を偽って生活を続けることは容易ではなく、何らかのきっかけで周囲に疑念を持たれることが、結果的に摘発につながりやすい構造があるとみられる。
今後の焦点
今回の事件では、男性がどのようにして26年もの長期間、摘発を免れてきたのかという点が今後の捜査の焦点になるとみられる。第三者からの通報が発覚のきっかけになったことからも、地域社会での気づきが摘発につながるケースがあることがうかがえる。
入管当局による在留管理のあり方や、長期不法滞在者の実態把握の難しさについても、今回の事件を機に改めて関心が集まりそうだ。
今回のケースは、在留カードの携帯・提示義務や、就労時の身分確認の徹底といった制度面の運用が、実際にどこまで機能しているのかを考えさせる事例でもある。26年という長期間、通報がなければ発覚しなかった可能性を踏まえると、行政の取り締まりだけに頼らない仕組みづくりも今後の課題になりそうだ。


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