店内に「レジ」も「客席」もない、デリバリーに特化した営業を行う「ゴーストレストラン」が続々と増えている。背景にあるのは、政府が進める飲食料品の消費減税だ。デリバリーやテイクアウトの税率が引き下げられることで、こうした業態が新たな追い風を受けている。
このニュースをきっかけに「ゴーストレストランとは何か」を調べる人が増えている。この記事では業態の仕組みとあわせて、なぜ今急増しているのかを解説する。元記事はこちら。
ゴーストレストランとはどんな業態か
ゴーストレストランとは、実店舗での接客や客席を持たず、デリバリーに特化して営業する飲食店の業態を指す。ネット上の注文プラットフォームにしか存在しない、いわば「架空の店舗」であることから、実態のない幽霊にちなんでこう呼ばれている。
複数のブランドを一つの厨房で同時に運営できる点が特徴で、実店舗を構えるより初期投資や固定費を大幅に抑えられるメリットがある。
なぜ消費減税が追い風になるのか
政府が進める飲食料品の「消費減税」は、来年4月から2年間、税率を現行の8%から1%に引き下げる方針が決定している。デリバリーやテイクアウトの飲食料品には現在、軽減税率8%が適用されているが、これが1%になれば、消費者が支払う金額はその分安くなる。
例えば、消費税8%で1080円だったデリバリーメニューが、税率1%になると1010円となり、70円安くなる計算だ。この価格差が、店内飲食よりもデリバリーを選ぶ消費者を増やす可能性があるとみられている。
豚丼専門店の「別の顔」
都内にある豚丼の専門店は、看板メニューの豚丼とは別に、アサイーボウルや麻辣湯といった全く異なるジャンルの料理をデリバリー専門で展開している。同じ厨房を使いながら、複数のブランドを同時に運営する手法だ。
この店を運営するXKitchenの山路健一郎代表は「消費税の減税とか1%になるみたいな話もある中で、デリバリーがお客さんに選ばれることが多くなる可能性があるので」と、今後の需要拡大を見据えた戦略であることを明かしている。
大手コンビニも参入
ゴーストレストランは、個人店だけでなく大手コンビニチェーンでも展開が進んでいる。ローソンでは、炒飯や焼きそばを中心に展開する「マチの中華食堂」、スパゲッティを中心に展開する「マチの洋食屋さん」の2ブランドを運営している。
デリバリーの注文が入ってから調理するため、できあがったばかりの本格的な味を楽しめる点が魅力とされ、現在全国およそ1700店舗にまで拡大している。既存のコンビニ店舗の厨房スペースを活用できるため、新たに専用の物件を借りる必要がなく、効率的な事業展開が可能になっている点も強みだ。
ファミレスチェーンの準備
ファミリーレストランチェーンの「すかいらーく」も、消費減税による需要拡大を見込み、宅配とテイクアウトメニューの新規開発を進めている。同社の佐藤拓男社長は「来年度の消費税減税に向けて、着々と準備は進めている段階」だとし、現在のニーズに合わせたゴーストレストランの開発を進めていく方針を示している。
大手チェーンがこぞってデリバリー特化業態の強化に動いていることは、業界全体がこの制度変更を大きなビジネスチャンスと捉えている表れといえる。
営業許可を巡る手続き
ゴーストレストランであっても、飲食物を調理・提供する以上、通常の飲食店と同様に保健所への飲食店営業許可の申請が必要になる。実店舗を持たないからといって、食品衛生法上の規制対象外になるわけではない。
複数のブランドを一つの厨房で運営する場合も、それぞれのブランドごとに適切な許可や届け出が求められるケースがあり、事業者は法令順守の面でも注意が必要とされる。
海外でのゴーストキッチン事情
ゴーストキッチンという業態は、もともとアメリカなど海外で先行して広まった仕組みだ。都市部の高い賃料や人件費を背景に、実店舗を持たずデリバリーに特化することでコストを抑える手法として、大手デリバリープラットフォーム企業自らがシェアキッチン事業に参入する事例も見られてきた。
日本でも同様の仕組みを提供する事業者が増えており、複数の飲食店が一つの施設内で調理場を共有しながら、それぞれ独立したブランドとしてデリバリーサービスを展開する「クラウドキッチン」と呼ばれる形態も広がりつつある。
ゴーストレストランのメリット・デメリット
ゴーストレストランのメリットとしては、実店舗を構える場合に比べて初期投資や家賃、人件費を大幅に抑えられる点が挙げられる。複数の料理人や事業者がレンタルキッチンを共有することで、さらにコストを圧縮できるケースもある。
一方でデメリットとしては、実店舗のような「その場での接客」による顧客との関係構築が難しいこと、デリバリープラットフォームへの手数料負担、天候や配達員不足による配送遅延リスクなどが指摘されている。
コロナ禍からの再注目
ゴーストレストランという業態自体は、新型コロナウイルスの流行でテイクアウト需要が急激に高まったコロナ禍にも大きく注目された経緯がある。当時は感染対策としての非接触ニーズが主な追い風だったが、今回は税制という別の要因が新たな成長を後押ししている。
コロナ禍が収束した後も一定の需要を保ち続けてきたこの業態が、消費減税という制度変更によって、再び拡大局面を迎えていることになる。
今後の展開
消費減税の実施は来年4月からとまだ先だが、各社はすでに準備を本格化させている。ゴーストレストランという業態が、外食産業全体の勢力図をどう塗り替えていくのか、今後の動向が注目される。
実店舗中心だった従来の外食ビジネスモデルが、税制の変化をきっかけにどこまでデリバリーへとシフトしていくのか。消費者の選択行動の変化とあわせて、業界の構造変化を見守る必要がありそうだ。
一方で、店内飲食という体験そのものに価値を見いだす消費者も依然として多く、デリバリーへの完全な代替が進むとは限らない。むしろ、実店舗とデリバリー専門ブランドを併用するハイブリッド型の経営が、今後の主流になっていく可能性もある。
消費減税という制度変更を機に、外食産業がどのような形で業態を多様化させていくのか。今回紹介した各社の取り組みは、その先駆けとなる事例として、今後も注目されていきそうだ。


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