かいぼりとは?「モネの池」がアオコで抹茶色に一変

かいぼりとは?「モネの池」がアオコで抹茶色に一変 社会

透き通った水面が「モネの池」とも評され、多くの市民や観光客を楽しませてきた井の頭恩賜公園(東京都武蔵野市・三鷹市)の井の頭池が、抹茶のような濃い緑色に一変している。水質改善で知られる「かいぼり」が実施されてきた池だけに、今回の様子に驚きの声が上がっている。

このニュースをきっかけに「かいぼりとは何か」「アオコとは何か」を調べる人が増えている。この記事では言葉の意味とあわせて、今回の状況を整理する。元記事はこちら

井の頭池の現在の様子

都西部公園緑地事務所によると、井の頭池の水が緑色になっている正体は、植物プランクトンの藍藻(シアノバクテリア)が大量発生した「アオコ」だ。2025年夏ごろからアオコが発生し始め、2026年度に入ってからは「池の水が緑になっている」という声が多く寄せられているという。

かつては澄んだ水面が特徴で「モネの池」とも呼ばれた井の頭池だが、現在は水中がまったく見えないほど濁っている状態だ。

アオコとは何か

アオコとは、浮き袋のようなガス胞を持つ藍藻(シアノバクテリア)が水面に大量発生し、水面が緑色の粉をふいたように見える現象を指す。窒素やリンなどの栄養分が豊富な富栄養化した水域で、水温や日照の条件が重なると発生しやすいとされる。

アオコが一斉に死滅すると悪臭を引き起こすこともあり、景観だけでなく水環境そのものへの悪影響も懸念される現象だ。

「かいぼり」とはどんな取り組みか

「かいぼり」とは「掻い掘り」の意で、池の水を抜いて底のヘドロや土砂を取り除き、水質浄化や外来種の駆除を行う取り組みを指す。池の環境を一度リセットし、在来の生態系を回復させることを目的としている。

井の頭池では2013年度、2015年度、2017年度の3回にわたってかいぼりが実施され、外来種であるブルーギルやオオクチバスの根絶に成功した実績がある。

井の頭池のかいぼりの成果

かいぼりを経て、井の頭池では現地で絶滅したと思われていた水生植物が復活するなど、大きな成果が確認されてきた。水質も一時的に大きく改善し、澄んだ水面が「モネの池」として親しまれるきっかけにもなった。

井の頭池はもともと武蔵野台地の湧き水によって清らかな水をたたえていた池で、江戸時代から貴重な水源として活用されてきた歴史を持つ。戦後の住宅開発による湧き水の枯渇や外来種の流入、水質悪化を経て、かいぼりによる再生の取り組みが進められてきた経緯がある。

アオコが生態系に与える影響

アオコの原因となる藍藻の中には、毒性物質を生成する種類も存在するとされ、大量発生時には水中の酸素濃度が低下し、魚類など水生生物の生育環境に悪影響を及ぼすことがある。景観の悪化だけでなく、池の生態系全体への影響が懸念される点も、アオコが問題視される理由の一つだ。

井の頭池はかいぼりを通じて希少な在来種の生息環境を回復させてきた経緯があるだけに、アオコの継続的な発生は、そうした生態系保全の取り組みにも影を落としかねない。

市民ボランティアによる支え

井の頭池のかいぼりは、行政の取り組みであると同時に、市民ボランティアの協力によって支えられてきた側面が大きい。池の水を抜いた後の外来魚の捕獲や、在来種の保護作業には、多くの地元住民や愛好家が参加してきた。

こうした市民参加型の環境保全活動は、専門家だけでなく地域全体で水辺の環境を守っていく取り組みとして、他の自治体からも注目されるモデルケースとなっている。

なぜ再びアオコが発生したのか

都西部公園緑地事務所は、池底に堆積した有機物を含む堆積土に加え、2025年夏以降の少雨で水の流入が少なかったことなどが、今回のアオコ発生に影響しているとみている。

かいぼりによって一時的に改善した水質も、時間の経過とともに堆積物が蓄積し、条件が重なれば再びアオコが発生しうることを、今回のケースは示している。7月には水を動かすための水位の上げ下げが実施されたという。

外来種を巡る新たな課題

井の頭池では、かいぼりを経て復活した絶滅危惧種の水草「ツツイトモ」の生育を、近年は外来種の水草「コカナダモ」が脅かしているとの指摘もある。2019年以降、コカナダモが勢力を拡大しており、継続的な駆除作業が続けられている。

在来種の回復と外来種の抑制は、一度の対策で完結するものではなく、継続的な管理が求められる分野であることが、井の頭池の事例からもうかがえる。

井の頭恩賜公園とはどんな場所か

井の頭恩賜公園は、東京都武蔵野市と三鷹市にまたがる都立公園で、1917年に日本初の郊外型公園として開園した歴史ある公園だ。園内には動物園も併設されており、都心からのアクセスの良さもあって、年間を通じて多くの家族連れや観光客が訪れる。

井の頭池はこの公園の中心的な存在で、ボート遊びを楽しめる観光スポットとしても知られている。桜の名所としても有名で、季節を問わず地域住民の憩いの場として親しまれてきた。

他の地域でも見られるかいぼりの取り組み

かいぼりは井の頭池に限らず、全国各地の池や湖沼で水質改善や外来種駆除の手法として実施されてきた。江戸時代から農業用のため池管理の一環として行われてきた伝統的な手法でもあり、近年は環境保全の観点から見直されている。

地域ごとに池の規模や課題は異なるものの、水を抜いて底を露出させ、堆積物を除去するという基本的な手法は共通している。井の頭池の事例は、都市部における大規模なかいぼりの先進事例として、他の自治体からも注目されてきた。

今後の水質対策

担当者は今回の対応として「水車を使って表層と低層の水を循環させる対策なども検討していく」としている。水を動かし続けることで、アオコの発生条件を抑える狙いがあるとみられる。

かいぼりのような大規模な対策と、日常的な水質管理の両輪で、井の頭池の環境がどう改善されていくのか、今後の推移が注目される。

「モネの池」としての魅力を取り戻せるか

井の頭池が「モネの池」と呼ばれるようになったのは、澄んだ水面に周囲の緑が映り込む様子が、印象派の画家クロード・モネの作品を思わせたことに由来するとされる。多くの人がその美しい景観を目当てに公園を訪れてきた。

今回のアオコ発生は、そうした景観が水環境の微妙なバランスの上に成り立っていることを改めて示す出来事となった。かいぼりによる再生の実績がある池だけに、今後の対策で再び透明度の高い水面を取り戻せるか、注目が集まっている。

都市の中にありながら豊かな自然を残す井の頭池は、多くの人にとって身近な自然観察の場でもある。今回のアオコ問題への対応が、今後の水辺環境の維持管理を考える上での一つの事例として、他の都市公園にも参考にされていく可能性がありそうだ。

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