歯科の自費診療を選ぶ患者が広がっている。
都心部を中心に、審美歯科やマウスピース矯正、インプラントなど保険適用外の診療を打ち出す歯科医院の広告が目立つようになった。
「自費診療」とはどんな仕組みか
自費診療とは、公的医療保険が適用されず、治療費の全額を患者が自己負担する診療のことだ。
保険診療は国が定めた基準に沿って行われるため、使える薬剤や機材、治療の手間に一定の制約がある。一方、自費診療にはそうした制約がなく、より時間をかけた検査や高度な機材を使った治療を選べるという特徴がある。
治療・予防の分野にも広がる自費診療
自費診療というと、歯を美しく見せる審美歯科のイメージが強いかもしれない。
しかし近年は、歯を抜かずに残すための精密な根管治療や、虫歯・歯周病のリスクを調べる歯科ドックなど、治療や予防の分野でも保険外診療を選ぶ患者が増えているという。
厚生労働省の調査によると、歯科診療所の収益に占める保険診療の割合は、2010年代前半の8割超から、近年は70%台まで少しずつ低下しているとされる。
厳しさを増す歯科医院の経営環境
一方で、歯科医院の経営環境は厳しさを増している。
東京商工リサーチによると、2025年度の歯科診療所と歯科技工所の倒産は39件で、前年度比56.0%増と過去20年で最多となった。国内の歯科診療所数はコンビニエンスストアを上回る規模にまで増えているという。
なぜ自費診療が選ばれるのか
歯と神経をなるべく残す治療方針を掲げる、ある専門歯科医院では、予約が3カ月待ちという人気だという。
担当医師は「患者さんの歯をなくさないようにするための治療となると、ある程度時間がかかる」としたうえで、「保険診療では赤字になるので、治療のクオリティーを確保するために自由診療が広がってきているのだと思う」との認識を示している。
患者にとっての選択肢
他院の保険診療で「神経や歯を抜く」と診断された患者が、より時間をかけた検査や治療を求めて自費診療の医院に駆け込むケースもあるという。
費用は決して安くないものの、歯をできるだけ残したいというニーズが、自費診療という選択肢を後押ししている構図が見えてくる。
今後の歯科業界の行方
技術力に加え、高額な設備投資への対応力が求められる時代になっており、「対応が遅れた歯科診療所の脱落は今後も増加が見込まれる」との指摘もある。
保険診療と自費診療、それぞれの役割分担が今後どのように変化していくのか、患者側の選択肢とあわせて注目される。
患者が選択肢を見極める時代へ
費用だけで判断するのではなく、治療の目的や優先順位に応じて保険診療と自費診療を使い分ける患者も増えているとみられる。
歯科医院側にとっても、患者一人ひとりのニーズに合わせた説明や提案力が、今まで以上に問われる時代になってきているといえそうだ。
情報を比較しながら自分に合った治療法を選べる環境が整っていくかどうかも、今後の業界の課題になりそうだ。
費用の透明性や、保険診療と自費診療のどちらを選ぶべきかを患者自身が判断しやすくする情報提供のあり方も、今後さらに重要になってくるとみられる。
歯科医院の倒産が過去最多となる中、経営体力のある医院とそうでない医院との差が、提供できる治療の選択肢にも表れてくる可能性がありそうだ。地域による医療格差が広がらないよう、業界全体での取り組みも求められている。歯科という身近な医療分野の変化は、他の診療科にも共通する経営課題を映し出しているとも言えそうだ。今後も患者のニーズと経営の持続可能性のバランスをどう取るか、業界を挙げての模索が続きそうだ。
元記事はこちら: 広がる歯の自費診療(Yahoo!ニュース)


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