静岡県の鈴木康友知事がリニア中央新幹線・静岡工区の着工を容認してから4日後の7月11日、川勝平太前知事が工事に反対する市民団体の集会にメッセージを寄せた。
その内容は、JR東海への強い批判を含む痛烈なものだった。
メッセージの中身
川勝氏は「静岡県だけが工事を遅らせたという説明は虚言だった」と主張した。
南アルプストンネル工事について「南アルプスに計り知れない危害を及ぼそうとしている。万死に値するほど誤った決定」とも述べている。
さらに、JR東海の歴代社長が「2027年開業がおぼつかないのは静岡県のせい」と説明してきたことを「ウソだった」と断じた。2024年に国交省のモニタリング会議で、遅れは静岡県以外でも起きていたことが明らかになったという経緯を根拠に挙げている。
川勝平太氏とはどんな人物か
川勝氏は経済学者出身で、静岡県知事を2009年から2024年まで4期近く務めた。
知事在任中はリニア中央新幹線の静岡工区着工に一貫して反対する立場を取り、大井川の水資源保全を理由にJR東海との交渉を長期化させたことで知られる。
2024年4月、県の新規採用職員への訓示で「モノを作ったり、価値を生み出す人と違って皆さんは、ある意味で一番、静岡県の人々の中で頭の高い方たちの集まり」などと発言したことが職業差別だと批判を浴び、辞職に至った経緯がある。
JR東海側の説明とのズレ
JR東海は長年、静岡工区の未着工が全体の開業遅れの主因だとする姿勢を取ってきた。
これに対し川勝氏は、実際には他県の工区でも遅れが生じていたことが国の会議で明らかになったとして、静岡県だけが責任を負わされてきたと訴えている。
この主張の当否は今回のメッセージだけでは判断しづらく、JR東海側の見解とあわせて検証が必要な部分だろう。
静岡県政の今後
着工容認によって工事は前進する見通しだが、前知事による今回の発言は、大井川の水資源問題への懸念が完全には解消していないことを改めて示した形だ。
鈴木知事のもとで進む着工後の監視体制や、JR東海との対話がどのように続けられていくのか、引き続き注目されるところだ。
前知事のメッセージが持つ意味
すでに退任している前知事が、後任の判断とは別に強いメッセージを発信すること自体、異例の対応といえる。
約9年間にわたってJR東海と向き合ってきた当事者としての発言だけに、賛否はあっても一定の重みを持って受け止められている。
現職の鈴木知事がこうした声にどう向き合いながら着工後の対応を進めていくのかも、今後の焦点の一つになりそうだ。
大井川流域の住民にとっては、知事が代わっても水資源への懸念そのものが消えたわけではない。前知事の発言は、そうした地元の不安の一端を代弁したものとも受け取れる。
一方で、退任した首長が後任の判断に強く異を唱える構図は、県政の一体感という観点では課題を残す面もある。今回のメッセージが今後の県政運営にどう影響するのか、注視が必要だろう。あわせて、JR東海側から今回の批判に対する反論や説明があるのかどうかも、今後の焦点になりそうだ。今回のメッセージには浜岡原発を巡るデータ不正への言及も含まれており、リニアの電力源という切り口から原発問題にまで話が及んでいる点も特徴的だ。企業倫理や情報公開のあり方という、より大きなテーマへと議論が広がりつつある。着工容認という節目を迎えたはずのリニア計画が、思わぬ形で改めて世間の注目を集める展開になった。工事が本格化する中で、こうした過去の経緯を踏まえた検証が今後も続けられるかどうかが問われている。
元記事はこちら: 川勝平太前知事がリニア巡りメッセージ(Yahoo!ニュース)


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