女優の中村ゆりさんが9月1日、直腸がんのため死去した。44歳だった。所属事務所アルファエージェンシーが9月14日、公式サイトを通じて発表した。今年7月には腸閉塞のため、来年1月放送予定のNHKドラマ10「デンジャラス」の出演降板を発表していた。
訃報を受け、鈴木亮平さんやMARIさんら、ゆかりのある芸能関係者から追悼の声が相次いでいる。この記事では中村さんの女優としての歩みと、多くの人の心に残る出来事を振り返る。元記事はこちら。
所属事務所からの発表全文
アルファエージェンシーは「中村ゆりは、13年前にもがんを患いました」とした上で、「その後寛解、元気に大好きな仕事を続け、検査も欠かさずに受けておりました」と説明。しかし「昨年1月再びがんが見つかり、手術は成功したものの、術後に転移が見つかりました」と、闘病の経緯を明らかにした。
「彼女はこの病気についてとても熱心に勉強し、主治医からも仕事を続けることを勧めていただいておりました」と伝え、「今年8月、復帰に向け回復に努めていた中、再び腸閉塞を起こし、突然余命わずかと告知を受けました」とつづった。最後は「ご家族や近しい方々と共に最後の時を大切に過ごすことができました」と結んでいる。
「YURIMARI」からのスタート
中村さんは1982年3月15日生まれ、大阪府出身。1996年、テレビ東京系オーディション番組「ASAYAN」の歌手オーディションに合格し、伊澤真理さんとデュオ「YURIMARI」を結成した。
1999年にYURIMARIが解散した後、活動休止期間を経て、2003年に女優として新たなキャリアをスタートさせた。
「パッチギ!」でのブレイク
女優としての中村さんの名を一躍知らしめたのが、2007年公開の映画「パッチギ! LOVE&PEACE」だ。ヒロインのキョンジャ役に抜てきされ、その演技が高く評価された。
同年の「全国映連賞」女優賞、第3回おおさかシネマフェスティバル新人賞を受賞するなど、映画界からも大きな評価を得た。以降、映画「そして父になる」(2013年)、ドラマ「探偵の探偵」(2015年)、「クロサギ」(2022年)など、数々の話題作に出演を重ねてきた。
日本生命CMでの熱演と反響
中村さんは2019年、日本生命のCM「笑顔が大好き篇」に出演した。小学生の男の子を育てるシングルマザーを演じ、家族のために懸命に働きながらも、医師から病気の治療を促される場面を熱演。子どもの前では笑顔を絶やさない母親の姿を、説得力を持って表現した。
このCMは2020年、「第58回JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール」で入賞している。当時、中村さんはがんを公表していなかったが、13年前に自身もがんを患い寛解した経験と重なる役柄を演じていたことが、今回の訃報を機に改めて注目を集めている。日本生命は「素敵な笑顔と温かいお人柄に触れさせていただいたことを、大切な思い出として心に刻んでおります」と追悼コメントを発表した。
共演者らが語った思い出
2014年放送のNHK連続テレビ小説「花子とアン」で夫婦役を演じた鈴木亮平さんは、「突然の訃報に心がまとまりません」とつづり、「強く柔らかく、誇り高く美しく、まさに百合のような人でした」と人柄を振り返った。
YURIMARIの元相方であるMARIさんは、「出会ってからの35年分の思い出が毎日のようにかけめぐり」と胸中を明かし、「愛する家族と親友たちに看取られて逝きました」と伝えている。映画監督の岩井俊二さんや、俳優の中野英雄さん、ミュージシャンのスガシカオさんら、多くの関係者からも追悼のコメントが寄せられた。
病と向き合いながら歩んだキャリア
所属事務所の発表文には「彼女の30代、40代は病とたたかい、持ち前の強い気力で乗りきることも多い日々でしたが、素敵な出会いと幸せ、充実もまたたくさんありました」とつづられている。
2度にわたるがんとの闘いを経ながらも、女優としての活動を続け、数々の作品で存在感を示してきた中村さん。その歩みは、同じように病と向き合う多くの人々にとっても、勇気を与えるものだったといえる。
幅広い活動歴
中村さんは映画やドラマだけでなく、CMやミュージックビデオ、舞台、ナレーションなど、幅広いジャンルで活躍を続けてきた。特定のジャンルにとどまらない柔軟な活動スタイルは、女優としての表現の幅を広げる大きな要因になっていたとみられる。
岩井俊二監督の「リップヴァンウィンクルの花嫁」に出演した際には、そのウェディングドレス姿が「ほんとに美しかった」と岩井監督自身が振り返るなど、映像作家からの評価も高かった女優だった。
難病と向き合う姿勢が伝えたもの
中村さんは病気について「とても熱心に勉強し」ていたと事務所が明かしている通り、がんと診断された後も、単に治療を受けるだけでなく、病気そのものへの理解を深めながら仕事との両立を模索していたことがうかがえる。
主治医からも仕事を続けることを勧められていたというエピソードからは、闘病中であっても自分らしく生きることを大切にしていた姿勢が読み取れる。こうした生き方は、同じように病と共に生きる多くの人々にとって、大きな励みになってきたと考えられる。
今後の焦点
所属事務所は発表文の中で「ご遺族への取材や、自宅周辺での撮影は一切ご遠慮いただきますようお願い申し上げます」と呼びかけている。故人とその家族の意向を尊重し、静かに見送ることが求められている。
中村さんが遺した作品や、多くの人の心に残るCMでの熱演は、これからも多くのファンの記憶に残り続けることだろう。


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