菓子店倒産が過去最多に、なぜ相次ぐのか

菓子店倒産が過去最多に、なぜ相次ぐのか 社会

菓子店の倒産、過去30年で最多に

ケーキ店や和菓子店など「菓子小売業」の倒産が急増している。東京商工リサーチの調査によると、今年1〜7月の累計倒産件数は45件に達し、過去30年で最も多かった2025年(1〜12月)の58件を年間ベースで上回ることが確実な情勢だという。

まだ年の半分強しか経過していない段階で、これまでの年間最多記録を超えるペースというのは異例だ。地域に長く根ざしてきた個人経営の店から、複数店舗を展開してきた中堅企業まで、規模を問わず倒産が相次いでいる。

知名度の高い老舗「お菓子の太子堂」を運営する太子堂(千代田区)も7月31日に東京地裁へ破産を申請した。長年親しまれてきたブランドだけに影響は大きく、一部店舗は同業他社が事業を引き継いでいる。老舗であっても倒産を免れないという事実は、業界全体が置かれた厳しさを象徴している。

倒産の大半を占める「販売不振」

原因別にみると「販売不振」が41件と全体の9割超を占める。値上げによる客離れや、コンビニやスーパーの安価なスイーツへの乗り換えが進んだことが背景にあるとみられる。

資本金1000万円未満の個人企業を含む小・零細店舗が31件(構成比68.8%)と約7割を占めており、体力の乏しい小規模店ほど厳しい状況に追い込まれていることがうかがえる。大手チェーンのようにスケールメリットを生かした調達交渉ができない分、原材料高の影響を直接受けやすい構造がある。

倒産形態も「破産」が44件(構成比97.7%)とほとんどを占め、再建型の民事再生などではなく、事業継続をあきらめて消滅型の破産を選ぶケースが大半だった。この比率の高さは、業界全体の先行き不透明感の強さを物語っている。

円安と倒産件数に見える相関関係

菓子小売業の倒産件数は、円相場の推移と一定の相関があるとされる。過去の推移をみると、1ドル=130円程度だった1998年1〜7月の倒産は14件(前年同期比250.0%増)だったのに対し、107円まで円高が進んだ2000年同期は5件(同28.5%減)にとどまった。

125円だった2002年は再び14件(同75.0%増)に増えており、円安局面で倒産が増える傾向が繰り返し確認できる。菓子の原材料は小麦、砂糖、バター、チョコレートなど輸入依存度の高い品目が多く、為替の変動がそのまま原価に跳ね返りやすい業種だといえる。

コロナ禍の資金繰り支援終了が転機に

コロナ禍では、実質無利子・無担保融資などの資金繰り支援策の効果により、菓子小売業の倒産は一時的に抑えられていた。売り上げが落ち込んでも、公的な融資でつなぎながら営業を続けられた店舗が多かったためだ。

しかし支援策が順次終了し、同時に急速な円安が進んだ2023年以降、倒産件数は再び増加に転じたという経緯がある。支援に頼っていた体力の弱い店舗ほど、返済負担と原材料高が重なった支援終了の反動を強く受けた形だ。コロナ融資の返済本格化が重なった時期とも一致しており、複数の逆風が同時に押し寄せた格好になっている。売り上げがコロナ前の水準まで回復しきらないうちに、原価と返済という二つの負担がのしかかった店舗も少なくないとみられる。

物価高・人手不足という二重の逆風

今年に入ってからは、物価高の影響を受けた倒産が15件と前年同期の10件から増加した。小麦や輸入食材、包装資材など、菓子作りに欠かせない原材料のほぼすべてが値上がりしており、販売価格への転嫁が追いつかない店舗が多いとみられる。

あわせて「人手不足」を理由とする倒産も5件発生しており、前年同期に比べて66.6%増となった。職人の高齢化や後継者不足に加え、他業種との人材獲得競争も影響しているようだ。手作業に頼る工程が多い菓子製造業は、省人化が難しい業種でもある。

洋菓子店にも広がる倒産の波

今回の傾向は和菓子店に限った話ではない。洋菓子店についても原材料費の高騰を理由とした倒産が過去最多水準で推移しているとの調査結果が別途報じられており、バターや小麦粉、輸入チョコレートなど、洋菓子ならではの原材料費上昇が経営を圧迫している実態がうかがえる。

和菓子と洋菓子で使う原材料は異なるものの、いずれも輸入品への依存度が高い点は共通している。ジャンルを問わず、菓子業界全体が構造的な原価高に直面していると言えそうだ。地方の老舗和菓子店から都市部の人気洋菓子店まで、幅広い層で経営環境が悪化していることがうかがえる。

お中元・お土産文化の変化も追い打ち

加えて、お中元や暑中見舞いといった贈答品需要そのものが縮小していることも、菓子小売業の苦境に拍車をかけている。簡素化志向の広がりや、帰省時の手土産を控える動きが影響しているとみられ、書き入れ時とされてきた夏の贈答シーズンの売り上げが伸び悩む店舗が目立つという。

かつては地域の菓子店にとって、お中元シーズンは年間売り上げの大きな柱の一つだった。その需要そのものが細っていることは、単なる一時的な逆風ではなく、構造的な変化として受け止める必要がありそうだ。

生き残りを図る菓子店の工夫

苦境が続く一方で、通販サイトやSNSを活用して商圏を全国に広げたり、季節限定商品で話題性を高めたりすることで顧客を維持しようとする菓子店も出てきている。実店舗だけに頼らない販路の多様化は、原材料高や人手不足が続く中での有効な対応策の一つとされる。

また、贈答用に限らず、日常使いしやすい小分けパッケージや低価格帯の商品を強化する動きも一部で見られる。贈答需要の減少を、個人消費の取り込みでどこまで補えるかが今後のカギになりそうだ。

他業種の倒産動向と比べてどうか

企業倒産全体を見渡しても、物価高や人手不足を理由とした倒産は近年増加傾向にあるとされ、菓子小売業に限った現象ではない。ただし、菓子小売業は輸入原材料への依存度が高く、かつ小規模事業者の比率が突出して高い業種であるため、他業種以上に価格転嫁の難しさが表面化しやすい構造がある。

飲食業や小売業全般でも同様の課題が指摘される中、菓子小売業の倒産件数の伸びは、物価高が中小事業者の経営体力をどれだけ削っているかを示す一つの指標としても注目されている。帝国データバンクなど他の調査機関も、原材料高と人件費上昇が重なる業種の倒産増加を繰り返し指摘しており、菓子小売業はその典型例として位置づけられそうだ。

職人技を支える街の菓子店、生き残りの鍵は

ショーケースに並ぶケーキや和菓子の値上がりを実感する消費者は多いだろう。手土産を買うことが、結果的に地域の菓子店を支えることにもつながる。小売店が苦境に立たされれば、原材料を卸す問屋やメーカーにも連鎖的に影響が及びかねない。

書き入れ時とされるお盆や贈答シーズンの動向が、今後の菓子小売業の明暗を左右しそうだ。長年地域に愛されてきた店の灯をどう守っていくか、消費者一人ひとりの選択も問われている。

業界団体や自治体による支援策の拡充とあわせて、消費者側が「少し高くても地元の店を選ぶ」という意識を持てるかどうかも、今後の菓子小売業の存続を左右する要素になりそうだ。

元記事はこちら:「ケーキや菓子店」の倒産が過去最多(東京商工リサーチ)

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