フジテレビが佐藤二朗さんと橋本愛さんのダブル主演ドラマ「夫婦別姓刑事」の制作を巡る経緯を公表した中で、「インティマシーコーディネーター」という言葉が登場した。聞き慣れない職種だと感じた人も多いはずだ。どんな仕事なのか、そしてなぜ今回の件で名前が挙がったのかを整理する。
インティマシーコーディネーターとは
インティマシーコーディネーターは、映画やドラマの撮影現場で、キスシーンやベッドシーンなど身体的接触を伴う演技(インティメートシーン)を撮る際に、出演者の心身の安全と尊厳を守る調整役だ。振り付けのようにシーンの動きを具体的に設計し、演者がどこまでの接触に同意しているかを事前に確認・共有する。
欧米の映画・ドラマ制作現場を中心に広まった職種で、性暴力被害の告発が相次いだ「#MeToo運動」以降、出演者への配慮やハラスメント防止の観点から導入が進んだとされる。日本の映像制作現場でも、近年少しずつ導入事例が増えてきている。
今回の一件で、なぜ注目されているのか
フジテレビの説明によると、橋本さんは出演にあたり、キスシーンやベッドシーンがある場合は事前に相談し、インティマシーコーディネーターなどの専門スタッフを関与させてほしいという条件を提示していた。
ただ、この配慮事項が共演者の佐藤さん本人にどこまで、どのタイミングで共有されるかを巡って、関係者間の認識にずれが生じてしまった。
台本にない形で顔に触れる演技があった場面や、楽屋でのやり取りを巡っては、外部弁護士による調査が行われ、一部のやり取りはハラスメントと評価された。フジテレビは関係者への負担を十分に軽減できなかったことを認め、ハラスメント防止策や相談体制の強化を表明している。
海外・国内での導入状況
Netflixをはじめとする海外の大手動画配信サービスの作品では、インティマシーコーディネーターの配置がすでに一般的になりつつあるという。一方、日本国内では制作予算や現場の慣習の違いもあり、導入はまだ発展途上の段階にある。
今回のような騒動が、国内の制作現場で出演者の安全を守る仕組みづくりを議論するきっかけになる可能性はあるだろう。
具体的にはどんな業務を担うのか
インティマシーコーディネーターの具体的な業務としては、撮影前に演者同士でどこまでの接触が可能かを確認する作業、シーンの動きを段階的に振り付けて安全に演技できるようにする調整、下着や体を覆うための専用衣装の用意などが挙げられる。
単に現場に立ち会うだけでなく、監督の演出意図を尊重しながら、演者の心理的な安全を確保する専門性の高い役割だとされている。
導入が広がりにくい背景
日本の映像制作現場でインティマシーコーディネーターの起用が進みにくい背景には、追加の人件費が発生することや、撮影スケジュールに調整の時間を組み込む必要があることなど、コストや制作体制上の課題があると指摘されている。
また、この職種自体の認知度がまだ十分に高くなく、身体的接触を伴う演技の調整を演者同士や演出部内で済ませてきた現場の慣習が長く続いてきたことも一因とされる。
現場のルールづくりへの関心
「インティマシーコーディネーターになるにはどうすればいいのか」「日本で資格や研修を受けられる場所はあるのか」といった点に関心を持つ人も増えている。専門機関による認定制度を持つ国もあり、日本でも人材育成の仕組みが整うかどうかが今後の焦点になりそうだ。
俳優やスタッフの安全配慮に関するルールが、契約書や事前のすり合わせでどこまで明文化されているか。制作現場全体の仕組みづくりへの関心も、あわせて広がっている。


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