東京・お台場のフジテレビ本社ビルで、局の繁栄と歴史を象徴していた絵画「紅富士」が撤去されていたことが分かった。日本の洋画家・嵐知重氏の作品とされるこの絵画は、幅8〜9メートル、高さ1.5メートル以上ある巨大な作品で、評価額は3億円相当とも言われている。
フジテレビは取材に対し「当該絵画は、全社的に進めている社屋改修に伴い、会議室から撤去いたしました」と回答している。このニュースをきっかけに「フジテレビの経営状況」を調べる人が増えている。この記事では撤去の背景にある経営状況を整理する。元記事はこちら。
「紅富士」とはどんな絵画か
「紅富士」は、1997年にお台場の本社社屋が開設されて以来、長年にわたって10階の大会議室に飾られてきた絵画だ。会議室は「赤富士の部屋」などと呼ばれるほど、局のシンボル的な存在だったとされる。
この絵画は所蔵ではなく、定期的に高額なリース料を支払って社内に展示されていたものだったという。フジがまだ勢いのあった時代からの遺産だったが、経営陣の判断により、所有者への返却が決まった。
フジテレビの2026年3月期決算
フジ・メディア・ホールディングス(FMH)は、2026年3月期の連結営業損益が87億円の赤字になったと発表している。前期は182億円の黒字だったことを踏まえると、大幅な業績悪化といえる。この赤字は、2008年に認定放送持株会社へ移行して以降、初めてのことだ。
広告収入の落ち込みが業績悪化の主な要因とされ、地上波テレビ全体の広告収入が縮小するなか、フジテレビの打撃は特に深刻だったとみられる。
広告収入減少の背景
広告収入が大きく落ち込んだ背景には、元タレント・中居正広氏の性加害問題に端を発する、企業のCM出稿控えがあったとされる。この問題を受けて、複数の企業がフジテレビへの広告出稿を見合わせる動きが広がった経緯がある。
その後、第4四半期には広告収入が事案前の9割程度まで回復したとされるが、通期での業績への影響は避けられなかった形だ。
制作現場への影響
広告収入の減少は、番組制作の現場にも大きな影響を及ぼしている。番組制作費は全盛期の半分近くにまで圧縮され、ドラマのロケ費用やスタジオセットの予算も極限まで削られているとされる。
大物タレントの起用や規模の大きな企画も影を潜め、現場からは「予算がなさすぎて企画が通らない」との声が上がっているという。かつて年間視聴率三冠王を連発していた時代とは、様変わりした状況がうかがえる。
他の美術品にも波及する返却の動き
「紅富士」の撤去に続き、社内各所に展示されている高額な絵画や美術品についても、返却が検討されているとされる。フジ元代表の日枝久氏が陣取っていた20階の部屋も、今年3月には廃止されており、同氏がリースしていた大量の絵画が、社内の役員室などにまだ残っているという。
経営陣は、こうした美術品についても合わせて返却を検討しているとされ、高額なリース料に見合わないと判断したコスト削減策の一環とみられる。
経営再建に向けた取り組み
フジ・メディア・ホールディングスは、新たな中期経営計画を公表し、2030年度までにメディア・コンテンツ事業へ1500億円の成長投資を行う方針を示している。目先のコスト削減と、中長期的な成長投資を両立させる難しい舵取りが求められている状況だ。
地上波テレビ全体が広告収入の構造的な減少に直面するなか、フジテレビがどのようなビジネスモデルへの転換を図っていくのかが、今後の焦点になるとみられる。
地上波テレビ業界全体が抱える構造的課題
フジテレビの苦境は、同局に限った話ではなく、地上波テレビ業界全体が直面する構造的な課題を象徴している。インターネット動画配信サービスの台頭により、若年層を中心にテレビ離れが進み、広告主もより効果測定がしやすいデジタル広告へと予算をシフトさせる傾向が強まっている。
こうした業界全体の逆風のなかで、フジテレビは中居正広氏の問題という個別要因も重なり、他局以上に厳しい状況に置かれた形だ。今後、テレビ局各社がどのように収益構造を多角化していくかが、業界全体の課題として問われている。
過去の栄光との対比
「紅富士」が飾られていた1997年当時のフジテレビは、80年代から90年代にかけて年間視聴率三冠王を連発し、「楽しくなければテレビじゃない」というキャッチフレーズのもと、メディア界の頂点に君臨していた。潤沢な制作費を背景に、数々の名物番組や大型企画を世に送り出してきた歴史がある。
そうした全盛期の象徴だった絵画が、経営再建の一環として静かに撤去されたという事実は、テレビ業界全体の時代の変化を物語る出来事として、多くの関係者に受け止められている。
今後の焦点
社員の間では「うちはそこまで金がないのか」といった不安や嘆きの声も広がっているとされ、局のシンボルだった絵画の撤去は、こうした社内の空気を象徴する出来事として受け止められている。
会社のシンボルを取り払い、フジテレビが経営再建を果たせるのか、今後の業績と番組編成の両面から注視されそうだ。


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