年金繰り下げ受給の損益分岐点は?ひろゆき氏が私見

年金繰り下げ受給の損益分岐点は?ひろゆき氏が私見 社会

実業家のひろゆき(西村博之)氏が9月8日までに公式Xを更新し、年金受給を間近に控えた人々に向けて私見を投稿した。「65歳になる親族の居る方へ。年金受給を繰り下げると受給額は、1か月あたり0.7%増えますが、10年国債利回りが3%を超えました」と切り出し、「男性の平均余命85歳だと、繰り下げるより65歳から受け取って、国債に投資をした方が受け取り総額は大きくなるやもしれません」と持論を展開した。

この投稿をきっかけに「年金繰り下げ受給の損益分岐点」を調べる人が増えている。この記事では繰り下げ受給の仕組みと、損益分岐点の考え方を整理する。元記事はこちら

繰り下げ受給とは何か

公的年金は原則65歳から受給が始まるが、希望すれば66歳から75歳までの間で受給開始時期を遅らせる「繰り下げ受給」を選ぶことができる。繰り下げた期間に応じて年金額が増額される仕組みで、1カ月繰り下げるごとに受給額が0.7%増え、この増額率は生涯変わらない。

例えば70歳まで5年間(60カ月)繰り下げた場合の増額率は42%、上限の75歳まで10年間繰り下げた場合は84%増となる。長生きするほど、繰り下げによる恩恵は大きくなる仕組みだ。

損益分岐点とはどういう考え方か

繰り下げ受給を検討する際によく使われるのが「損益分岐点」という考え方だ。これは、繰り下げて増額された年金の累計受給額が、65歳から通常通り受け取った場合の累計受給額を上回る年齢を指す。

一般的な試算では、70歳まで繰り下げた場合の損益分岐点はおおむね82歳とされる。つまり、82歳より長く生きれば繰り下げた方が受給総額は多くなり、それより早く亡くなれば65歳から受け取っていた方が総額は多くなる計算だ。おおよその目安として、繰り下げ開始から約12年で、それまで受け取らなかった分を取り戻せる計算になるとされる。

ひろゆき氏の主張のポイント

ひろゆき氏が着目したのは、繰り下げによる増額率(年率換算でおよそ8.4%)と、国債利回り(10年国債で3%超)との比較だ。65歳から年金を受け取り、その分を国債などで運用に回した場合の増加分と、繰り下げによる増額分を天秤にかけるという発想になる。

「男性の平均余命85歳」という前提を踏まえると、70歳までの繰り下げの損益分岐点(82歳前後)に近い年齢であることから、必ずしも繰り下げが有利とは言い切れないというのが、ひろゆき氏の主張の骨子とみられる。

寄せられた反応

この投稿には、さまざまな意見が寄せられている。「年金は損得ではなく、その年金が今必要か否かだと思う」「数%の差なら早くもらった方がお得だと思う」といった声のほか、「寿命がわからないことと、年金受給額が医療、介護の社会保険料に影響することを天秤にかけて考えると難しい」という指摘も見られた。

年金受給額は、後期高齢者医療制度の保険料や介護保険料の算定基準にも影響するため、単純な受給総額の比較だけでは判断しきれない側面があることを示す意見といえる。

繰り下げ受給のメリットとデメリット

繰り下げ受給の主なメリットは、増額された年金を生涯にわたって受け取り続けられる点にある。長生きするリスクに備える「保険」としての性格が強く、株式や国債のような運用リスクを負わない安定した増額手段といえる。

一方でデメリットとしては、繰り下げている期間は年金収入がないため、その間の生活費を別の資産でまかなう必要がある点が挙げられる。また、先述の通り、受給額の増加が医療・介護保険料の負担増につながる可能性がある点にも注意が必要とされる。

繰り下げ受給を選ぶ際の考え方

専門家の間では、繰り下げ受給の判断は単純な損益分岐点の計算だけでなく、本人や家族の健康状態、他の資産状況、働き方の見通しなど、総合的な事情を踏まえて決めるべきだという意見が一般的だ。

特に、65歳以降も就労収入がある人にとっては、年金受給を急ぐ必要性が低く、繰り下げによる増額を選びやすい傾向がある。逆に、生活費を年金に頼る度合いが高い人にとっては、早期受給の安心感が優先されるケースも多い。

繰り上げ受給という選択肢もある

年金には、受給開始を早める「繰り上げ受給」という制度もある。60歳から65歳になるまでの間で受給を開始でき、繰り上げた月数に応じて年金額が減額される仕組みだ。1カ月繰り上げるごとに0.4%減額され、この減額率も生涯変わらない。

早く現金収入を得られる安心感がある一方、減額が生涯続くため、長生きした場合の総受給額は少なくなりやすい。繰り下げ受給とは逆方向の選択肢として、健康状態や資金計画によっては検討の余地がある制度だ。

ひろゆき氏の過去の年金関連発言

ひろゆき氏はこれまでも、年金制度や資産運用に関する私見をたびたびSNSで発信してきた人物だ。実業家としての立場から、公的制度と民間の資産運用を比較する視点での発言は、賛否を含めて注目を集めやすい傾向がある。

今回の投稿も、単なる制度紹介にとどまらず、国債利回りという具体的な数字を持ち出して比較した点が、多くの反響を呼んだ要因の一つとみられる。

今後の焦点

今回のひろゆき氏の投稿は、年金制度における「損得勘定」という切り口に注目が集まった一例といえる。ただし、多くのコメントが指摘する通り、年金は単純な資産運用の選択肢というより、長生きに備える社会保障制度としての側面が強い。

受給開始時期の選択に「正解」はなく、それぞれの家計状況や価値観に応じた判断が求められる。今回のような議論をきっかけに、自身の年金受給プランを見直すきっかけにする人も増えそうだ。

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