ショートスリーパーは訓練でなれる?遺伝子研究の結論

ショートスリーパーは訓練でなれる?遺伝子研究の結論 社会

1日30分睡眠の生活を17年間続けていると発信してきた実業家の堀大輔氏が、9月9日から169時間にわたるライブ配信を実施した。しかし配信中には、施術中にいびきをかいて眠る様子が映るなどのハプニングが相次いだ。

配信終了後、堀氏はXのアカウント名から「ショートスリーパー」という表記を削除し、「睡眠時間は自由」という文言に変更。この一連の経緯をきっかけに「ショートスリーパーは訓練でなれるのか」を調べる人が増えている。この記事では遺伝子研究が示す科学的な結論を整理する。元記事はこちら

今回の配信で起きたこと

堀氏は「一般社団法人日本ショートスリーパー育成協会」の代表理事を務め、独自の睡眠改善プログラムを通じて受講生2500人以上を指導してきたと謳ってきた人物だ。今回の169時間配信は、自身の主張を証明する目的で行われたとみられる。

しかし配信2日目にはヘッドスパの施術中にいびきをかく様子が映り込み、6日目には入浴シーンでのハプニングも発生。配信終了後の投稿では「私は今回の一週間の配信で、何かを証明したつもりはありません」と述べ、これまでの主張とは異なるニュアンスの発言をしたことで、ネット上で疑問の声が広がった。

ショートスリーパーとは何か

ショートスリーパーとは、一般的に必要とされる7〜8時間程度の睡眠時間よりも大幅に短い睡眠で、心身の健康を維持できる体質を持つ人を指す医学的な概念だ。単に「睡眠時間を削って生活している人」とは区別される。

真のショートスリーパーは、短時間睡眠であっても日中の眠気や集中力低下、健康リスクの増加が見られないという特徴を持つとされる。

DEC2遺伝子の発見

2009年、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームが、ショートスリーパーの家系を調査したところ、特定の遺伝子「DEC2」に共通の変異があることを発見した。この変異を持たせたマウスでも睡眠時間が短縮されたことが確認され、短時間睡眠は生まれつきの遺伝的特性であると結論づけられた。

その後の研究では、NPSR1やADRB1、GRM1、さらに2025年にはSIK3という遺伝子も発見されており、現時点で短時間睡眠に関わる遺伝子は少なくとも5つ報告されている。

訓練でなれるのかという疑問への科学的な答え

「努力や訓練によってショートスリーパーになれる」という説について、信頼できる科学的根拠は現時点で確認されていない。必要な睡眠時間そのものを訓練によって短縮できることを示した研究は存在しないというのが、専門家の間での共通認識とされる。

つまり、ショートスリーパーであるかどうかは、生まれつきの遺伝的特性によってほぼ決定されており、後天的な訓練で誰もがなれるものではないというのが、現時点の科学的コンセンサスだ。

睡眠不足がもたらすリスク

真のショートスリーパーではない人が無理に睡眠時間を削ると、集中力の低下や免疫機能の低下、生活習慣病のリスク増加など、さまざまな健康上の悪影響が生じる可能性が指摘されている。慢性的な睡眠不足は、自覚のないまま心身に負荷を蓄積させることもあるとされる。

堀氏が今回の配信中に見せた居眠りやまぶたの重さも、こうした睡眠不足の兆候である可能性が考えられる。

受講者への影響

堀氏の睡眠改善プログラムは、月あたり数十万円という高額な料金で提供されてきたとされる。今回の一連の経緯を受け、これまでプログラムを受講してきた人々への説明責任を求める声も上がっている。

科学的に訓練による短時間睡眠化が証明されていない中、こうした高額プログラムがどのような効果を実際にもたらしてきたのか、改めて検証が必要になりそうだ。

ショートスリーパーはどれくらい珍しいのか

DEC2遺伝子などの変異を持つ真のショートスリーパーは、人口全体のごくわずかな割合にとどまるとされる。多くの研究者は、こうした特性を持つ人は非常にまれであり、大多数の人にとって7時間前後の睡眠が心身の健康維持に必要だと指摘している。

著名な歴史上の人物の中には、短時間睡眠で活動していたとされる逸話が残る人もいるが、そうした逸話が科学的に検証された遺伝的特性によるものなのか、単に睡眠不足を無理に乗り越えていただけなのかは、判別が難しいケースも多い。

SNS上での反応の広がり

今回の一連の騒動は、堀氏個人の主張を巡る問題にとどまらず、「睡眠は訓練で削れるのか」という健康リテラシー全体への関心を呼び起こすきっかけにもなっている。

Xでは、過去の堀氏の発言と今回の配信内容との矛盾を指摘する声が相次いでおり、影響力のある発信者が科学的根拠の乏しい情報を広めることのリスクについても、改めて議論が広がっている。

今後の焦点

アカウント名から「ショートスリーパー」の表記が削除されたことは、堀氏自身がこれまでの主張を見直す兆しとも受け取れる。今後、本人からどのような説明がなされるのかが注目される。

睡眠は健康の根幹に関わるテーマだけに、科学的根拠に基づかない情報が広まることには注意が必要だ。今回の一件を機に、睡眠に関する正確な知識への関心が高まることが期待される。

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