日本のAIの水準は、国際的に見て決して低いわけではない。
しかし、トップに位置する米国・中国との間には大きな差があり、この差を埋められない根本原因が高等教育にあるという指摘が出ている。
世界11位という評価の実態
英トータス・メディアの「Global AI Index」(2024年版)によると、AI分野で日本は世界83カ国中第11位だという。
1位・2位の米国・中国とは大きな差がある一方、シンガポール、イギリス、フランス、韓国、ドイツ、カナダ、イスラエル、インドも日本より上位にある。決して最下位に近いわけではなく、全体としては上位グループに入っているとも言える。
それでも満足できない理由
日本の経済規模や、かつての技術立国としての地位、製造業における蓄積を考えれば、第11位という位置に満足してよいとは言えないとされる。
重要なのは順位そのものよりも、上位国との「差の質」だという指摘がある。AIは、重化学工業や自動車産業が中心だった時代とは異なる競争原理で動いているためだ。
かつての強みが通用しない領域
かつての日本は、品質管理や生産現場の改善、部品のすり合わせ、熟練労働によって高い競争力を築いてきた。
しかしAI分野では、ソフトウェア、データ、計算能力、研究開発の速度が決定的な意味を持つ。ここで遅れれば、製造業の現場がいくら優れていても、世界の技術体系の中心から外れていくとされる。
米国で進む「創造的破壊」
米国社会は今、AIを軸として大きく変わろうとしている。
その一方で、すべての企業の株価が上昇しているわけではない。これまで成長企業とされてきたSaaS企業の株価が下落する「SaaSの死」と呼ばれる現象も起きているという。生成AIがこれまでのサービスを代替してしまうためで、経済学者シュンペーターの言う「創造的破壊」そのものと言える状況だ。
古い産業構造が急速に置き換わっていくこの流れは、AI分野で先行する米国だからこそ顕著に表れている現象だとされ、日本でも今後同様の変化が広がっていく可能性がある。
日本に求められる変化
こうした急速な変化についていくためには、高等教育の段階からAI関連の人材育成をテコ入れする必要があるとされる。
製造業の現場力という従来の強みを生かしつつ、ソフトウェアやデータ活用の分野でどう競争力を高めていけるかが、今後の日本の位置づけを左右しそうだ。
教育制度の見直しは一朝一夕には進まないだけに、長期的な視点に立った人材育成戦略をどう描いていくかが問われている。
大学の研究環境や産学連携のあり方、若手研究者への投資など、複数の要素が絡み合う課題だけに、政府・企業・教育機関が一体となった取り組みが求められそうだ。
優秀な人材が海外に流出してしまう「頭脳流出」の問題も、日本のAI競争力を語るうえで避けて通れない論点の一つとされている。
高い専門性を持つ研究者が、より良い待遇や研究環境を求めて米国や中国の企業・大学に移籍する動きは以前から指摘されてきた。国内に優秀な人材をとどめ、さらに海外からも呼び込めるような環境整備が、今後の競争力回復には欠かせないとみられている。
順位という数字だけを追いかけるのではなく、教育の質そのものを底上げしていく地道な取り組みこそが、長期的な競争力につながっていくだろう。世界の変化のスピードに置いていかれないためにも、危機感を持った議論を今から始める必要がありそうだ。次の世代がどのような教育を受け、どんな力を身につけていくのか、その行方が日本の未来を左右すると言っても過言ではない。
元記事はこちら: なぜ日本はAIで米中に勝てないのか(Yahoo!ニュース)


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