リニア静岡工区着工へ 大井川の水問題とは

リニア静岡工区着工へ 大井川の水問題とは 社会

静岡県の鈴木康友知事は7日、リニア中央新幹線の静岡工区について着工を容認すると表明した。

県議会6月定例会の閉会後に開かれた全員協議会での発言だ。長らく動かなかったリニア計画にとって、大きな節目となる。

リニア中央新幹線とはどんな計画か

リニア中央新幹線は、超電導リニアという方式で走行する新しい高速鉄道で、品川―名古屋間を最短40分で結ぶ計画だ。

路線の9割以上がトンネル区間になるとされ、山梨・長野・岐阜などを通る中で、静岡県内を通る区間が今回の「静岡工区」にあたる。全国に広がる工区のうち、この静岡工区だけが長らく着工できずにいた。

着工容認までの経緯

鈴木知事はこれまで、JR東海から県民への説明状況や、法令上の手続きの進み具合を見て判断すると述べてきた。

先週にはJR東海の丹羽社長と会談し、住民説明会の報告を受けたという。その際「一定の理解が進んだ」と発言していた。

着工に必要な法令手続きについても動きがあった。JR東海は河川法などの申請書類を、3日までに県と静岡市へすべて提出したことが明らかになっている。

9年にわたり対立してきた「大井川の水問題」とは

静岡工区の着工がこれほど長引いた背景には、大井川の水資源を巡る問題がある。

2013年、JR東海はトンネル工事によって大井川の水量が最大で毎秒2トン減少するとの試算を公表した。流域の農業用水や生活用水への影響を懸念する声が上がり、当時の川勝平太知事は工事に強く反対する立場を取り続けた。

大井川は流域の複数の市町にとって、古くから農業や暮らしを支えてきた重要な水源だ。県外の大規模工事によって水量が減るという懸念は、地元にとって切実な問題として受け止められてきた。

以来、県とJR東海の交渉は約9年間にわたって平行線をたどってきた。

知事交代で流れが変わった

状況が動いたのは2024年4月、川勝氏の辞職に伴って鈴木知事が就任してからだ。

鈴木知事はリニア推進へと方針を転換し、2026年1月には県・JR東海・国の三者で、水量に影響が出た場合の補償について確認書を交わした。

さらに県の専門部会は今年3月までに、「水資源」「トンネル工事で出る土」「生物多様性」の3分野28項目について、JR東海の対応策をすべて了承した。JR東海は5〜6月にかけて大井川流域の11市町で住民説明会を計22回開催し、地元への説明を積み重ねてきたという。

着工しても開業はまだ先

着工が容認されたとはいえ、静岡工区の完成にはなお約10年かかる見通しだ。

品川―名古屋間の先行開業は、早くても2036年以降になるとみられている。当初計画されていた2027年開業からは、すでに大きくずれ込んでいる形だ。

静岡工区以外でも、全国84工区のうち31工区で当初想定していた工程の遅れが表面化しているとされる。今回の着工容認だけで開業時期が一気に前進するわけではない点には注意が必要だ。

着工後も残る論点

今回の容認は、あくまで工事再開への一歩にすぎない。実際の掘削工事が進む中で、大井川の水量に想定を超える変化が出ないか、継続的な監視が必要になる。

確認書に基づく補償の仕組みが、実際にどう運用されていくのかも注目したい点だ。地元住民にとっては、着工後こそが本当のチェックの始まりだといえるだろう。

約9年間の対立を経てようやく動き出す工事だけに、県とJR東海の双方が、これまでの長い経緯をきちんと踏まえた、丁寧な対応を続けられるかが問われることになりそうだ。

元記事はこちら: リニア中央新幹線静岡工区巡り鈴木知事が“着工容認”を表明(Yahoo!ニュース)

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