「働いて働いて」の流行語大賞に懸念も 過労自殺遺族の声とその背景をわかりやすく整理

首相のスピーチに登場したフレーズ「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が、新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれました。一方で、「働いて働いて」の流行語大賞に懸念 「言葉が独り歩き」 過労自殺遺族、という報道の通り、長時間労働や過労死・過労自殺で家族を失った遺族からは強い不安の声も上がっています。

この記事では、この言葉がどのような場面で生まれ、なぜ評価されたのか、そしてなぜ懸念の声が出ているのかを、できるだけ中立的に整理します。また、「言葉が独り歩きする」とはどういうことか、私たちの働き方を考えるうえでのポイントもあわせて解説します。

「働いて働いて」とはどんなフレーズか

最初に、「働いて働いて」という言葉そのものについて整理しておきます。この流れを理解すると、「前向きに受け取る人」と「不安を感じる人」の違いが見えやすくなります。

このフレーズは、首相が就任後のスピーチで、自身の決意を語るなかで用いたものとされています。国会や政権運営の場で、「ワークライフバランスという言葉を捨ててでも、全力で職務に取り組む」という強い意気込みを示すための言葉として使われました。

ここでのポイントは、もともとは「首相として全力を尽くす」という自己宣言の文脈で発せられた言葉だという点です。その一方で、「働いて働いて」の部分だけが切り取られると、「とにかく働き続けるべきだ」というメッセージにも聞こえかねないという面もあります。

つまり、発言した側の意図と、受け取る側の状況によって、まったく違う意味を帯びてしまう可能性がある言葉だと言えます。

新語・流行語大賞で選ばれた理由の整理

新語・流行語大賞は、その年に世の中でよく使われた言葉や、社会現象を象徴するフレーズを選ぶ企画です。必ずしも「好意的に評価される言葉だけ」が選ばれるわけではなく、その年の「空気」を映し出すような言葉が選ばれる傾向があります。

「働いて働いて」が選ばれた背景には、史上初の女性首相の登場や、政治への関心の高まり、働き方をめぐる議論の活発化などがあります。印象的な言い回しであったこともあり、ニュースやSNSで繰り返し取り上げられ、それ自体が一つの話題になりました。

このように、「言葉としてのインパクト」や「時代性」を評価する観点からは、大賞に選ばれた理由も理解できます。ただし、同じ言葉が、別の立場からはまったく違う意味に感じられていることも、同時に押さえておく必要があります。

「働いて働いて」の流行語大賞に懸念を示す遺族の声

次に、「働いて働いて」の流行語大賞に懸念を示す過労死・過労自殺遺族の思いについて整理します。ここでは感情的な非難ではなく、「なぜこの言葉に強く反応せざるを得なかったのか」という背景を落ち着いて見ていきます。

報道では、過労死や過労自殺で家族を亡くした遺族が会見を開き、「この言葉が流行語大賞に選ばれたことに衝撃を受けた」「働き過ぎで命を落とした人がいる現実を思うと、素直には受け止められない」といった声を上げたと伝えられています。

ある遺族は、亡くなった家族が「限界を超えて働かされていた」と振り返り、「働いて働いてという表現が一人歩きすると、再び同じような悲劇が繰り返されるのではないか」と不安を口にしたとされています。この言葉には、「これ以上、自分たちと同じ苦しみを味わう人を増やしたくない」という願いが込められています。

過労死・過労自殺とは何か

ここで、過労死・過労自殺という言葉の意味も簡単に整理しておきます。

過労死とは、長時間労働や過度のストレスが原因となって、脳や心臓の病気などで突然亡くなってしまうケースを指す言葉として使われています。例えば、残業が続き睡眠時間が大きく削られることで、心臓や血管に負担がかかり、致命的な発作を起こしてしまうような事例です。

過労自殺は、長時間労働、パワーハラスメント、過大なノルマなどによる精神的な負担が長く続き、うつ病などの心の病気を発症し、自ら命を絶ってしまうケースを指します。

こうした問題が社会問題として注目され、日本では過労死等防止対策を進める法律がつくられ、国や自治体、企業が対策に取り組む枠組みが用意されています。つまり、「働き過ぎで命を落とす人をなくす」という方向性を、社会全体として共有してきた流れがあります。

そのような流れの中で、「働いて働いて」というフレーズが前向きなイメージの象徴として広がることに、遺族が強い違和感を持つのは自然なことだと考えられます。

「言葉が独り歩きする」ことへの不安

遺族の懸念としてよく出てくるのが、「言葉が独り歩きしてしまう」という表現です。これは、もともとの発言の文脈や意図とは関係なく、言葉だけが一人で広がってしまう状態を指します。

例えば、「首相が『働いて働いて』と言っていた」「流行語大賞に選ばれた」という事実だけが印象に残ると、現場の上司や組織が、「もっと頑張れ」「もっと働け」というメッセージを正当化するために、この言葉を都合よく使ってしまう可能性があります。

実際に、過去には「根性」や「自己責任」といった言葉が、本人の健康や生活を犠牲にするような働き方を押し付ける場面で使われてきたこともあります。「働いて働いて」という言葉も、同じような使われ方をしてしまうのではないか、という不安があるわけです。

遺族の「言葉が独り歩きしてほしくない」という訴えには、「どのような言葉が、どのような現場で、どのように使われるか」という視点を大切にしてほしい、という思いが込められていると考えられます。

働き方をめぐる議論とのつながり

「働いて働いて」の流行語大賞は、単なる一つの流行語という枠を超えて、働き方をめぐる大きな議論とも関係しています。ここでは、その背景を整理します。

日本では、長時間労働を是正するための働き方改革が進められてきました。残業時間の上限規制や、有給休暇の取得義務化、テレワークの導入など、制度面の整備が段階的に進んでいます。一方で、現場では「人手不足」や「業務量の削減が進まない」といった課題も残っています。

その結果、「制度上は働き方改革が進んでいるが、実感としてはあまり変わっていない」「むしろ仕事量が増えて、効率化を迫られている」という声も少なくありません。こうした状況の中で、「働いて働いて」というフレーズが象徴的に扱われると、「やはりこれからもひたすら働くことを求められるのか」という不安につながりやすくなります。

生活のために長く働かざるを得ない人たちの現実

一方で、「もっと働きたい」と感じている人がいるのも事実です。例えば、基本給が低く、残業や深夜勤務、休日出勤による割増賃金がないと生活が厳しいという人たちです。

トラックドライバーや配送現場などでは、長時間の拘束や待機時間が発生しやすく、労働時間と収入のバランスが課題となっています。残業時間の上限が厳しくなると、「働き過ぎを防ぐ」という意味では前向きでも、「手取りが減って生活できない」という別の問題が生まれる場合もあります。

このような現場で働く人の中には、「働いて働いて」という言葉に共感する人もいます。もっと働ける環境や賃金体系を望んでいる人にとっては、「働くことそのものを否定されたくない」という思いがあるからです。

つまり、「働いて働いて」という言葉は、過労死遺族にとっての危機感と、現場で働く人の生活実感という、複数の文脈を同時に背負っていると言えます。

過去の「24時間戦えますか」との比較

今回の議論は、かつて話題になった「24時間戦えますか」というフレーズを思い出す人も多い問題です。この言葉は、かつてのテレビCMで使われ、当時は「よく働くサラリーマン」の象徴として広まりました。

しかし現在では、「24時間戦えますか」のような働き方は健康面で大きなリスクがあるとされ、見直しの対象となっています。あの時代を振り返って、「あの働き方は無理があった」という評価をする人が増えています。

「働いて働いて」という言葉も、今後の社会の動きや働き方の変化によって、将来どのように評価されるかが変わっていく可能性があります。だからこそ、今の段階でさまざまな立場からの声に耳を傾けることが大切です。

このニュースから考えられるポイント

ここまで、「働いて働いて」の流行語大賞をめぐる議論を整理してきました。最後に、ニュースを目にした私たちが、どのような点を意識できるかをまとめます。

  • 政治家や著名人の言葉は、多くの人に影響を与える可能性があるため、言葉の重さを意識して受け止めること。
  • 「頑張る」「全力で働く」といった価値そのものは大切だが、「長時間働くこと」が当然だという空気にならないよう注意すること。
  • 自分や身の回りの人の働き方を振り返り、「このペースが続いても健康に問題がないか」を定期的に確認すること。
  • 心や体に不調を感じた場合は、会社の相談窓口や産業医、自治体の相談窓口、労働相談窓口などに早めに相談すること。
  • 流行語として話題になった言葉も、ただ受け入れるのではなく、「自分にとって本当に大切な働き方は何か」を考えるきっかけにすること。

「働いて働いて」の流行語大賞に懸念 「言葉が独り歩き」 過労自殺遺族というニュースは、単なる言葉の話ではなく、私たち一人ひとりの働き方と生活のバランスを問い直すテーマでもあります。

まとめ

「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」という首相のフレーズが新語・流行語大賞に選ばれた一方で、過労死・過労自殺遺族からは、「働いて働いて」の流行語大賞に懸念 「言葉が独り歩き」 過労自殺遺族という報道の通り、強い不安と違和感の声が上がっています。

背景には、過労死問題への取り組み、働き方改革の進展と現場のギャップ、生活のために長時間働かざるを得ない人たちの現実など、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。

大切なのは、「言葉そのものが良いか悪いか」だけで判断するのではなく、「どのような場で、どのように使われ、どのような影響を与える可能性があるか」を考えることです。

このニュースをきっかけに、自分自身や身近な人の働き方を見直し、「無理をし過ぎていないか」「助けを求めるサインを見落としていないか」を確認することが、より安全で健康的な働き方につながっていきます。


コメント

タイトルとURLをコピーしました