「出かけようとすると激しく鳴く」「帰ってくると部屋がぐちゃぐちゃ」…。
お留守番が苦手な犬は、もしかすると分離不安になっているかもしれません。
この記事では、犬の分離不安のサインと、ひとり時間に慣れてもらう具体的なステップを、初心者の飼い主さんにも分かりやすく解説します。
「うちの子を安心してお留守番させたい」「分離不安かどうか知りたい」と検索してきた方に向けて、
今日からできるお留守番トレーニングをまとめました。
1. お留守番が苦手な犬に多い「分離不安」とは?
分離不安(分離不安症)とは、
犬が飼い主や家族と離れることに強い不安やストレスを感じ、問題行動として表れてしまう状態のことです。
お留守番が少し苦手なだけの犬もいますが、
分離不安になると犬自身もとてもつらく、飼い主も大きな負担を抱えます。
- 近所から苦情が来るほど鳴き続ける
- 家具・壁・ドアを破壊してケガをする
- 下痢・嘔吐など体調不良につながる
「寂しがり屋だから仕方ない」で放置すると悪化することもあるため、早めの対策が大切です。
2. お留守番が苦手な犬に見られる分離不安のサイン
愛犬に当てはまる項目がないかチェックしてみましょう。
複数当てはまる場合は、分離不安の可能性が高いと考えられます。
2-1. 飼い主の外出前後に見られる行動
- 飼い主が準備を始めるとソワソワし、落ち着きがなくなる
- 玄関にへばりつく、出かけるのを必死で止めようとする
- 鍵・バッグ・コートなど、外出と結びついた物を見ると吠え始める
2-2. お留守番中に起きやすい行動
- インターホンが鳴っていないのに長時間吠え続ける・遠吠えをする
- ドアや窓、ケージを壊そうとする・引っ掻き続ける
- クッションやソファ、床をかじって破壊する
- 普段はしない場所での粗相(おしっこ・うんち)が増える
2-3. 体や感情に現れるサイン
- よだれ・ハアハアと激しい呼吸(パンティング)が増える
- 食欲不振・下痢・嘔吐など、ストレスによる体調不良
- 飼い主が帰宅したとき、興奮しすぎて制御できないほどはしゃぐ
これらのサインは留守中の防犯カメラやペットカメラで確認できます。
“家ではおとなしいのに、留守中だけ荒れている”というケースも多いので、できれば動画でチェックすることをおすすめします。
3. 単なる「寂しがり」と分離不安の違い
お留守番が苦手な犬=すべて分離不安というわけではありません。
次のようなポイントで見分けてみましょう。
3-1. 分離不安の可能性が高いケース
- 留守中の吠え・破壊・粗相などが毎回起こる
- 外出前からパニックのような状態になる
- 飼い主の姿が家の中から見えなくなるだけでも不安が強い
3-2. 寂しがり屋だけど、まだ軽い状態のケース
- 最初の数分だけ鳴き、その後は落ち着いて寝ている
- 家具の破壊などはなく、生活に大きな支障がない
- 徐々にお留守番の時間を伸ばすと慣れていく様子がある
どちらの場合も「慣れてもらうトレーニング」は有効ですが、
本格的な分離不安の場合は動物病院やトレーナーへの相談も視野に入れましょう。
4. 分離不安になってしまう主な原因
お留守番が苦手な犬・分離不安になりやすい犬には、いくつかの共通点があります。
4-1. 小さい頃から常に一緒にいた
- 子犬期からほとんどひとりの時間がない生活だった
- 常に誰かが家にいて、急に留守番が増えた
「いつも誰かが一緒」が当たり前だと、
急にひとりになることが大きなストレスになります。
4-2. 暴風・引っ越し・家族構成の変化などのストレス
- 引っ越しやリフォームで環境が変わった
- 家族や同居犬との別れを経験した
- 大きな音(雷・工事音など)に強い恐怖を感じた
こうした出来事をきっかけに、飼い主がいないと不安が爆発する犬もいます。
4-3. 飼い主への依存度が高い
- 常に抱っこ・添い寝が当たり前
- トイレやお風呂までついてくる
- 離れようとすると吠えるので、つい一緒にいてしまう
「かわいそうだから」と要求に全て応えてしまうと、
犬にとっては自立するチャンスがなくなることもあります。
5. お留守番が苦手な犬に「ひとり時間」を教える5つのステップ
ここからは、分離不安の予防・軽度の分離不安に有効なトレーニングを紹介します。
愛犬のペースに合わせて、できるところから始めてみてください。
ステップ1:安心できる「居場所」をつくる
まずはお留守番中に過ごす場所を、犬にとって「安心できる巣」にします。
- サークルやクレート、ベッドを決めていつもそこにフカフカの敷物を敷く
- 普段からその場所でおやつやごはんを与え、良いイメージをつける
- 飼い主が家にいる時も、その場所で落ち着いて過ごす時間を増やす
「クレート=閉じ込められる場所」ではなく、「落ち着ける自分の部屋」だと思ってもらうことが大切です。
ステップ2:家にいる時から「プチ留守番」の練習をする
いきなり長時間留守番させるのではなく、飼い主が家にいる状態で、見えない時間を作るところから始めます。
- 犬を安心できるスペース(クレートやサークル)に入れる
- 「ちょっと待っててね」と声をかけ、別の部屋に移動する
- 最初は30秒〜1分程度で戻り、静かにしていたらやさしく褒める
- 少しずつ時間を延ばす(1分 → 3分 → 5分 → 10分…)
このとき、帰ってきた瞬間に大騒ぎせず、
落ち着いたトーンで「いい子にお留守番できたね」と声をかけるのがポイントです。
ステップ3:外出準備に慣らす(トリガー対策)
分離不安の犬は、鍵・バッグ・コートなどの外出サインに敏感です。
そこで、これらの動作に慣らしていきます。
- 実際に出かけない日に、鍵を持つ・コートを着る・バッグを持つ練習をする
- そのたびにおやつをあげる・遊ぶなど、「外出準備=良いこと」のイメージをつける
- 時々、鍵を持ったままソファに座るなど、「サイン=必ず外出」ではない状況も作る
こうすることで、外出準備そのものへの過剰な不安を和らげていきます。
ステップ4:短時間の本格的なお留守番から始める
家の中でのプチ留守番が落ち着いてできるようになったら、
数分〜10分程度の短い外出で練習してみます。
- おやつ入りコングや知育トイなど、ひとりでも夢中になれるものを用意する
- 犬がそれに集中しているタイミングで、何事もないようにサッと外出する
- 数分後に帰宅し、犬が静かであれば落ち着いて褒める
- 徐々に外出時間を伸ばしていく(10分 → 20分 → 30分…)
吠え続けてパニックになっている時間が長い場合は、無理に時間を伸ばさずステップを戻すことも大切です。
ステップ5:生活全体で「適度な距離感」を意識する
お留守番の練習以外の時間も、常にベッタリになりすぎないように意識してみましょう。
- 家にいるときも、あえて別の部屋で過ごす時間を作る
- 呼ばれるたびにすぐ飛んで行くのではなく、こちらのタイミングでも声をかける
- 「待て」「ハウス」「おいで」などの基本トレーニングで、自信と落ち着きを育てる
飼い主との信頼関係が安定しているほど、ひとりでも安心していられる時間が増えていきます。
6. お留守番が苦手な犬へのNG対応
分離不安やお留守番が苦手な犬に、やってはいけない行動もチェックしておきましょう。
- 帰宅後、粗相や破壊行動をその場で叱る
- 「かわいそうだから」と、常に抱っこ・常に一緒の生活にする
- 長時間のお留守番を、何の準備もなく急に始める
- 吠え続けているときに、あわてて戻って構ってしまう
特に、帰宅後に怒っても犬は「留守番中の行動」と結びつけて理解できません。
叱るよりも「どうしたらうまくいくか」を教える姿勢が大切です。
7. 動物病院や専門家に相談した方がよいケース
次のような場合は、自宅だけでの対策では限界がある可能性があります。
- 留守中、数時間にわたってほぼ吠え続けている
- 自分の体を舐め続けてハゲてしまう、出血してしまう
- ドアやケージを噛み続け、歯や口を傷つけてしまう
- 食欲不振・下痢・嘔吐など体調不良が続く
このような場合は、まず動物病院で健康チェックを受け、
必要に応じて行動診療科やプロのドッグトレーナーに相談するとよいでしょう。
8. まとめ|お留守番が苦手な犬にも「ひとり時間」は教えられる
お留守番が苦手な犬・分離不安気味の犬でも、
飼い主さんが根気よくステップを踏めば、少しずつひとり時間に慣れていくことは十分可能です。
本記事のポイントをおさらいします。
- お留守番が苦手な犬には、分離不安のサインが隠れていることがある
- 安心できる居場所づくりと、短時間からのプチ留守番練習が効果的
- 外出準備(鍵・バッグ・コート)に慣らして、外出=怖いを減らす
- 知育トイ・コングなどでひとりで楽しめる時間を増やす
- どうしてもつらそうなときは、動物病院や専門家に相談する
「うちの子はお留守番できないから…」とあきらめる必要はありません。
できるステップから少しずつ、愛犬のペースに合わせて練習を続けていけば、
飼い主さんも犬も、より安心して毎日を過ごせるようになります。


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